今年の夏競馬を彩るサマーマイルシリーズの第1戦として行われるGⅢ・しらさぎステークス(6月22日、阪神・芝1600メートル)。最大の注目点は、事実上の「準ローカル重賞」にGⅠ馬チェルヴィニア(牝4)が参戦してきたことだ。
同馬は昨年のGⅠ・秋華賞(京都・芝2000メートル)を快勝した超一流馬だが、その後は前走の海外遠征を含むGⅠ戦線や国内GⅡ戦線で、まさかの3連敗。今回は「恥も外聞もかなぐり捨てて」のGⅢ参戦であり、いわゆる背水の陣で臨む陣営の勝負度合いはまさに「激アツ」と言っていい。
今回のメンバーを見渡すと、失礼ながら一流と言える出走馬はほぼ皆無であり、主戦の名手ルメールが函館から赴いて引き続き手綱を取ることも含め、チェルヴィニアの頭(1着)は「限りなく鉄板に近い」とみるしかない。
しかし「頭が堅ければヒモは大荒れ」という金言もまた、しばしば経験する「有力な競馬あるある」のひとつだ。
本サイトがこれまで公開した記事で指摘してきたことだが、圧倒的に強い馬が決定的に強い勝ち方をした場合、色気のあるその他の有力馬は「1強」を負かすべく、道中で無理を重ねた結果、無欲の構えでレースを進めた伏兵馬に「出し抜け」を食らってしまうのだ。
チェルヴィニア1強の今回も、例外ではない。中でも「ヒモ穴」で2着、3着に食い込む可能性が高い「ふたつのエントリー組」には要注意だ。
第1は3勝クラスやリステッドを勝ち上がってきた「格上挑戦馬」。第2はJRAによる当該時期限定での恩恵を受けた「特例軽量馬」である。
後者について言えば、今年は「斤量51キロ」のダンツエラン(牝3)ただ1頭。同馬の重賞勝ちは、不良馬場で行われたGⅢ・ファンタジーS(京都・芝1400メートル)のみだが、「裸同然」の51キロならば、「無欲の激走」があっても驚けない。
いずれにせよ、チェルヴィニアを除く有力馬については、過去の戦績に応じて課される別定重量も含めて、信頼性はいささか怪しいと言わざるをえない。
(日高次郎/競馬アナリスト)