西武ライオンズの本拠地ベルーナドーム近く、西武球場前駅周辺は、まるでうねるような人波に包まれていた。
6月21日、22日の両日、スクールアイドルグループ「ラブライブ!サンシャイン!!」Aqoursのラストステージ「Finale LoveLive!~永久stage~」を見終えた約3万人のラブライバー(シリーズファン)が、一斉に西武球場前駅の改札へ殺到。改札を抜けるまでに30分から1時間以上を要し、数百メートルの通路は迷路のように長く伸びる「人の壁」と化した。
本公演はメンバー9人全員が揃う最後のライブとして、当初は東京ドーム開催の声があったものの、会場に選ばれたのは過去の開催実績を重視したベルーナドーム(約3万6000人収容)。最寄りの西武山口線(レオライナー)は通常20分から30分間隔の運行だが、イベント時には最大で約15分間隔に増発。しかしピーク時の一斉流出を吸収しきれず、輸送キャパシティーの限界が浮き彫りになった。
「会場を出てから電車に乗るまで全く動けなかった」
「駅まで1時間…通勤ラッシュよりひどい」
ライブ後にはそんな嘆きがSNSに多数アップされるなど、ラブライバーからは会場設計やアクセスの脆弱さへの批判が噴出。ところが西武ライオンズのファンからは「ここは野球のホームなんだから文句を言うな」との反論が相次ぎ、両者が激突する事態に。
さらに同日、東京ドームでは巨人×西武の公式戦が開催。「最初から東京ドームを譲っていれば…」というラブライバーに「こっちはシーズン中だぞ」と野球ファンは猛反発する。タイムライン上はファン同士の小競り合いで騒然とした。
アイドルファンと野球ファンが交錯した一夜は、感情の衝突とともに、大規模イベントを支える交通インフラの課題をも浮き彫りにした。西武ファンにとっては退場動線の時間差誘導はお馴染みの対策だが、イベント初参加のアイドルファンには想定外の混乱だった。
次回、同様の摩擦を防ぐには、ラブライバーも西武ファンもお互いの行動パターンや会場運営の仕組みを理解し合い、参加者が気持ちよく過ごせる動線作りに協力することが大切だ。
(ケン高田)