芸能

緊急追悼連載! 高倉健 「背中の残響」(17)あえて“言わない”を貫く

20150122l

「考え直してください!」

 急を聞きつけ、東映の重役が北海道まで飛んできた。安藤が旭川から札幌に向かうのに時間がかかったため、東京からの便が先に着いたのだ。それでも安藤の答えは変わらない。

「男がいったんケツをまくったんだ。はい、そうですかとはいかない。そのまま東京へ帰ったよ」

 前代未聞の逃走劇に、石井監督は頭を抱えた。ラストシーンは高倉と安藤が馬を並走させ、吹雪の中を大平原の彼方へ去っていくというものだった。

 撮影できなかった部分がどうなったのか、安藤は完成作を劇場で観て驚いた。

「そのシーンがない代わりに、俺の吹き替えを使って、東北の街で撃たれて死ぬシーンになっていたよ」

 監督による“意趣返し”とも取れなくもないが、では、主演の高倉はどうだったか? 安藤は身を乗り出して強調した。

「このことについて、健さんは何も言わなかった。俺に面と向かって言うことはないにしても『こんなことがあったんだ』と、誰かに恨みがましいことを口にしても不思議じゃない。いや、むしろそれが人情というものだろう」

 東映だけでなく、日本の映画界を代表するドル箱スターである。前年には「網走番外地 大雪原の対決」が年度別興行成績の1位に輝いている。それでも高倉は、共演者の非常事態を責めなかった。

「誰かに話していれば『健さんがこんなことを言っていた』と俺の耳に入るが、そんなことは一度もなかった。言いたいこともあっただろうに、男らしいね」

 この件で安藤と高倉の仲がこじれることはなく、以降も多くの任侠作品で共演している。また石井監督にも含むところはなく、再び「現代任侠史」(73年、東映)で組んだ。

 安藤はまた、菅原文太を東映に移籍させた立役者でもある。2大スターとの邂逅は、同時に映画界における「盟主争い」も見つめたことになる。

「10年以上にわたって東映を引っ張ってきた健さんの任侠路線が次第に下火になっていって、それに取って替わるように『仁義なき戦い』(73年、東映)という実録路線が大ヒットして菅原文太が出てくる。これが時代の〈潮目〉というやつで、これに抗うことはできない」

 実録ブームの渦中にある76年に高倉は東映を退社し、フリーとして生きる決意をする。映画産業も下降線をたどっており、決して洋々たる未来ではなかったはずだ。

 それでも、と安藤は言う。

「潮目が変わり“引き潮”になって東映を退社するわけだけど、フリーになって辛抱し、やがて『八甲田山』(77年、東宝)や『幸福の黄色いハンカチ』(77年、松竹)でみごと、再び“上げ潮”に乗ってみせた」

 再浮上はいかにしてなしえたのか──、

「健さんは、役者であることに命懸けで生きてきたんだろう。四十余年前、クルマの中から通りすがりに見ただけだけど、あのとき健さんが発していたオーラは、たぶん、その覚悟と決意が発散していたのではなかったかと今は思うんだ」

カテゴリー: 芸能   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    芸能・政治・カネの「実は?」に迫る!月額550円で“大人の裏社会科見学”

    Sponsored
    194887

    予期せぬパンデミックによって生活や通勤スタイルがガラリと変わった昨今、やれSDGsだ、アフターコロナだ、DXだと、目まぐるしく変化する社会に翻弄されながらも、今を生き抜くのが40~50代の男たち。それまでは仕事が終われば歓楽街へ繰り出し、ス…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , , |

    出会いのカタチもニューノーマルに!「本気で結婚したい」男がやるべきこと

    Sponsored
    168750

    「結婚はしたいけど、もう少し先でいいかな……」「自然な出会いを待っている……」と思いながらも、「実は独りが寂しい……」と感じてはいないだろうか。当然だ。だって男は弱いし、寂しがりだから。先の“言い訳”じみた考えも、寂しさの裏返しのようなもの…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    テストコアNO3が若者から評判なワケは?理由と口コミ調査

    Sponsored
    184479

    男性の性の悩みといえば、中高年世代のイメージが強い。ところが今、若者の半数近くが夜のパフォーマンスに悩みを抱えている。ヘルスケアメディアの調査(※1)によって、10代から30代の44.7%が「下半身」に悩みを抱えているという衝撃の実態が明ら…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
謎の放置状態で急浮上した「クビになるタレント2人」の「証拠映像」
2
これは見ておくべき!谷まりあ「とんでもない大きさのバスト」を大サービス
3
「仕事がないものですから…」沢田研二が伏せていた「田中裕子との関係」/壮絶「芸能スキャンダル会見」秘史
4
渡辺裕之「コロナ首吊り自死」前の奇行証言!「撮影現場で『物がなくなった』と妙なことを…」
5
フジ井上清華、割れ目クッキリ四つん這いで髪を振り乱し…「ヌケる!」未公開映像