「顔で選んでくれれば1番を取る」
この発言を聞いた時、ふと学生時代に友人から見せられた、ミスコン候補が一同に並んだ写真を思い出した。なぜなら、彼が応援している女性の写真を指さし、同じようなことを口走ったからである。
とはいえ、それは30年以上も前の話。ところが、ほんの3年前の2022年3月15日、自らが選対本部長を務める陣営の事務所開きで、立候補予定の新人女性について冒頭のごとく言い放った政治家がいる。与野党はもとより、選挙区内外の人々から「女性蔑視」「外見差別」と大バッシングを食らったのは言うまでもない。発言の主は日本維新の会・石井章参院議員だ。
この年の夏に予定されていた参議院選挙で、栃木選挙区からは女性5人を含む6人が立候補する予定だった。維新は新人の会社社長・大久保裕美氏を公認候補とすることを発表していた。石井氏は党北関東ブロック長で、大久保陣営の選対本部長も担っており、この日は日光市で開かれた事務所開きに参加。そこで場を盛り上げようとしたのだろう、口をついて出たのが、
「女性5人が出るが、年齢はいちばん若く、顔で選んでくれれば1番を取るのは決まっている」
こんなネタを地元メディアが放っておくはずはなく、翌3月16日付の下野新聞社オンライン版では、さっそくこの発言が大きくクローズアップされることに。同紙の取材に答えた石井氏は、
「(新人の)若さを前面に出す意図だった。自民現職を除く他の候補者の顔は知らず、誹謗中傷するつもりは全くない」
すぐに発言を撤回したものの、時すでに遅し。数十年前のミスコンが華やかな頃であればいざ知らず、今の時代に「顔で選んで…」は完全にアウトだろう。当然ながら、身内である維新所属の地方議員からも「申し訳なく、悔しい」の大合唱が巻き起こることになったのである。
石井氏は謝罪、撤回したにもかかわらず、牛久市での演説ではまたもや、
「見た通りの人で、顔だけ見ると…」
そう言いかけて、
「あまり顔のことを言うと叩かれるから言えない」
と冗談交じりに続け、「顔だけ発言」を報じた下野新聞を名指しして、
「とんでもない新聞屋にちょん切られた」
これが再び物議を醸すことになった。
噂によれば騒動以降、現在も石井氏と地元メディアはバチバチの関係にあるのだとか。今後は「新聞屋にちょん切られる」ことのないよう、発言には注意せねば…。
(山川敦司)