「佐賀の人間とってもネガティブラー」
かつて、お笑い芸人のはなわが、生まれ故郷の佐賀をこう自虐的に歌った「佐賀県」なる曲。「バスにのって佐賀の県道を走ると一面田んぼだらけ まるで弥生時代」だというが、その佐賀県に新幹線を通す計画が発表されたのは、1970年代初頭のことだ。
周知のように、九州には南北を貫く博多~鹿児島中央間に、実に38年の歳月をかけて、2011年に新幹線が全線開通。博多と長崎を結ぶ長崎ルートも建設中で、長崎から佐賀県の新鳥栖(九州新幹線駅)へ向かう約120キロのうち、新鳥栖~武雄温泉間は在来線に直通できる特急、武雄温泉から長崎までは新幹線専用のフル規格で整備することで、両県が合意。事業計画が進んでいた。
ところが新幹線専用のフル規格と在来線とが乗り継ぐ特急車両開発の過程で、数々の不具合が発生。計画案は暗礁に乗り上げた。
そこで長崎県と政府与党の検討委員会が協議の結果、佐賀県に対し、代案としてフル規格の新幹線を通すか、在来線も使用可能なミニ新幹線を通すかという2案を提案。しかしどちらにしても、佐賀県の莫大な費用負担が避けられないことから、山口祥義知事は両案を拒否していた。
そんな中、同ルートの建設現場を視察したという自民党の谷川弥一衆院議員の口から飛び出したのが、
「できれば佐賀の知事さんには、台湾のような付き合いをしてほしい。今は韓国か北朝鮮を相手にしているような気分だ」
という仰天発言だった。2019年5月18日のことである。
谷川氏は長崎3区選出の与党検討委員会のメンバーで、2019年4月のトンネル工事現場を視察後の与党検討委員会で直接、山口知事に伝えたという。この事実が翌日の各紙で報じられると、大騒動に。谷川氏は「適切ではなかった」として撤回する意向を示したものの、「言うにコト欠いて北朝鮮とひとくくりにするとは何事か!」と佐賀県民は怒り心頭である。
佐賀新聞の取材に対し、谷川氏はしどろもどろになって次のように釈明。
「とりつく島のない佐賀県の対応が、日本との関係がぎくしゃくしている韓国のように感じ、その場で山口知事に伝えた。配慮を欠いた発言だった。佐賀県民におわびしたい。韓国のようだとは言ったが、国交がない北朝鮮にたとえたのは明らかな間違いで、真意ではない。情のある対応をお願いしたい、という意味だった」
谷川氏は韓国、北朝鮮との友好を掲げて設立された超党派の「朝鮮通信使交流議員の会」幹事長を務めているが、聞きようによっては「佐賀県の対応は面倒なこの両国と同様」ととれる。非難の嵐は当然というべきだろう。
しかもこの発言は自民党が「失言防止マニュアル」なるペーパーを各議員に配布(5月10日)したわずか8日後とあり、またも多くの国民から自民党議員の資質が問われることになってしまったのである。
(山川敦司)