マグニチュード6.5。2016年4月14日、熊本地方を震源地として熊本や大分を襲ったこの地震は、九州各地に甚大な被害をもたらした。家屋が倒壊し、ライフラインはメチャクチャに。ところがそれから1週間も経たない4月19日、おおさか維新の会の衆参両院議員懇談会で、共同代表の片山虎之助氏は耳を疑う言葉を放っていた。
この当時、永田町では通常国会会期末の6月1日に解散すれば、公職選挙法の規定で7月10日のダブル選挙が可能となることから、野党各党が浮き足立つ状況にあった。
むろん解散には「大義」が必要だが、今回のそれは、2017年4月からの導入が予定されている、消費税率10%への引き上げ問題。
ところがこの大地震を受けて、政府としても、このタイミングで税率の引き上げを決めるのは困難だろう、との見方が広がっていた。しかも仮にダブル選挙となれば、復旧に奔走する各自治体からの、政府与党への逆風は否めない。そんな状況もあり、片山氏の口から出たのが、以下の見解だったのである。
「終盤国会になってから熊本・大分の地震が起こりまして、これがずっと長引いていますね。まあ、政局の動向に影響を加えることは確かなんで、例えばTPPの審議や採決、当面はこの日曜日の補選にも影響がないわけではない。さらに言えばね、ダブルになるのかならないのか、消費税を上げるのか上げないのか、全部絡んでくるんですね。たいへんタイミングのいい地震で…」
おそらく本人は、このタイミングでの地震が政局に与える影響は計り知れない、とでも言いたかったのだろうが、いくらなんでも「タイミングのいい地震」では、まるで意味が違う。言葉の選び方が無茶苦茶すぎるのだ。
発言後、さすがにしまったと思ったのだろう、慌てて釈明のコメントを出したのだった。
「(衆院補選、ダブル選、消費税といった)政局の判断や国会日程に影響を与えかねない、政局的な節目に重なってしまった、という趣旨で発言をしました。言葉の使い方が不適切でした。誤解を招いたとすればお詫びし、その部分の発言を撤回します」
片山氏は翌日のツイッター(現X)でも、
「私は、発生の時期が政局の判断や国会日程に影響を与える節目に重なった趣旨を申し上げたつもりでしたが不十分で、全く不徳の致すところです」
と改めて謝罪。しかし被災者の怒りが収まるはずはなく、国民の罵声を浴びることになる。
「誤解も真意もない!こんな発言は言語道断、完全アウト!」
「つべこべ言わずに即刻、議員辞職すべき」
「議員というより人間失格!一日も早く消えてくれ!」
生活を失い、途方に暮れる被災者の気持ちに思いが及ぶことがなかったのは、まさしく「議員も人間も失格」だったのである。
(山川敦司)