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記事全文を読む→羽生どころではない…藤井聡太「もうタイトル通算30期」は史上空前の「スピードと密度」
わずか84手目、杉本和陽六段の玉は逃げ場を失い、藤井聡太棋聖の巧みな寄せに屈した。
6月30日、千葉県木更津市の「龍宮城スパホテル三日月」で行われた「ヒューリック杯第96期棋聖戦」5番勝負の第3局。藤井はシリーズ3連勝で棋聖6連覇を果たし、タイトル通算は史上最年少で最速の30期に到達した。7月5日開幕の王位戦で防衛すれば31期となり、歴代4位の渡辺明九段に並ぶ。
勝負の行方を決定づけたのは、終盤に現れた先手・杉本の75手目▲3二金への△1二玉だった。飛車で金を取るのが常識とみられる局面で、藤井は玉を金のすぐ横「腹側」へそっと寄せる逆方向の受け。
形勢バーはこの瞬間、先手53%から後手約87%へと40ポイント以上もジャンプした。
立会人の木村一基九段は「普通の手ではないです」とし、跳ね上がる勝率を見て「うわ、そっちがいいんですか…」。スタジオ解説の高崎一生七段は「玉寄りは危なすぎる。普通は同飛」と繰り返していたが、グラフの急転に腕を組み、「怖いどころの騒ぎじゃない。そっちで受けきってるの?」と首を振るばかり。控室の棋士や記者がざわめく中、藤井は十数手で寄せ切り、盤を静かに終わらせた。
到達した「30期」は何を意味するか。まずはスピードだ。
羽生善治九段が26歳半で打ち立てた「30期最速」を、藤井は 22歳11カ月と大幅に前倒しし、プロ入りからおよそ8年9カ月で達成。これも羽生(11年3カ月)の記録を大幅に短縮した。
次にタイトル獲得の順位である。羽生(99期)、大山康晴(80期)、中原誠(64期)、渡辺明(31期)に続く歴代5位に早くも滑り込む。30期超えの現役棋士は、渡辺と藤井の2人しかいない。
密度も桁違いだ。初戴冠は2020年7月の棋聖だった。それから丸5年足らずで、30期に到達。単純計算で「年間6期」ペースとなる。内訳は8奪取22防衛、昨年に叡王を失った以外は一度も手放さず、7冠のまま大台に乗せた。谷川浩司27期、米長邦雄19期といったレジェンドのキャリアをすでに抜き去り、まだ22歳という年齢が衝撃を倍化させる。
異次元の読みの深さを示す逸話は尽きない。昨年の第95期棋聖戦第2局では、田中悠一六段が「我々の視力が2.0なら藤井君は8.0。相当先まで見通している」と評し、屋敷伸之九段も「ひえ…すさまじい組み立て」と言葉を失った。
年齢、スピード、防衛率、その全てにおいて史上最速ペースで成長曲線を描く藤井将棋。一手の驚きがそのまま記録更新へと直結し、盤上の常識が刻々と書き換えられていく。
レジェンド羽生の「99期」という頂も、早晩「具体的な通過点」として語られるかもしれない。
(ケン高田)
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