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Posted on 2026年08月23日 10:00

映像ディレクター・佐々木敦規の「お台場ハチャメチャ青春記」〈第2回〉(1)今なら「コンプラ違反」な企画

2026年08月23日 10:00

 今なら確実に労働環境やコンプライアンスを理由に叩かれるだろうが、バラエティーの制作現場は“地獄”だった。佐々木はその洗礼を日本テレビ「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ‼」で受けた。おもしろければ何やってもいい‼ ─異才たちのエネルギーが無軌道に炸裂していた時代だ。

「ここから飛び降りたら楽になれるな‥‥」

 編集スタジオに泊まり込み、朝10時から33時(翌日夜9時)まで仕事する生活を続けて1週間。22歳の佐々木敦規青年は心身共に限界をはるかに越えていた。スタジオのある赤坂見附の夜景を見つめながら、「逃げたい」「消えたい」しか考えられなくなっていた。

「本当につらかった。でも『ここで逃げたらダメだ』と思い直して、乗り切った。あの地獄を生き抜いたから今があるんですよ。収録現場も編集作業も、アノ番組ほどつらかったことは一度もなかった(苦笑)」

 佐々木が語る“地獄”とは、「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!」(日本テレビ系。以下、お笑いウルトラクイズ)でのこと。この時、佐々木は、同番組の放送第2回に携わっていた。

 佐々木は大学在学中から出版社や新聞社、テレビ局でアルバイトをし、それぞれの現場を見た上で「テレビ番組を作りたい」とテレビ局を志望。採用枠数名の難関は突破できなかったが、「それなら俺のところに来い」と野球評論家(当時)の小林繁に誘われて「ナインティーン企画」に入社する。

「小林さんは番組制作に興味を持って会社を作ったけど、仕事がなくて、この時の僕は他の制作会社に出向する形で収録現場に行かされた。それが『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!』だったんです」

 第1回は1989年に特番として放送された。日本テレビの人気番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」のお笑い版という体裁で、クイズ番組から大きく逸脱し、バカバカしさと過激さが交じり合う笑いが人気を呼んだ。カースタントや爆破、当時はまだ珍しかったバンジージャンプなど、大掛かりな企画に体当たりで挑む若手芸人の中から、ジミー大西、ダチョウ俱楽部、出川哲朗ら「リアクション芸人」が頭角を現していく。90年より正月、4月、9月と番組改編期の人気番組として定着した。

 大学4年生だった佐々木が放り込まれたのは、第2回。90年元日のゴールデンタイムに放送されたものだ。

 ロケは大人数かつ大規模で、そして過酷だった。

「スタッフとタレントで総勢100人以上が、1泊2日で静岡県伊東市内をロケと移動の繰り返しです。ロケ場所が多くて時間のロスが許されないので、準備する『前乗り隊』、タレントと一緒の『撮影本隊』、後片付けの『後処理隊』の3班に分かれて、僕は前乗り隊でひたすらロケの準備に追われました。僕は初めてのロケ現場で、大勢のスタッフの中で唯一のテレビ制作未経験者でしたよ」

 第2回の放送はフジテレビの「新春かくし芸大会」とぶつける形に。日テレは「お笑いウルトラクイズ」に総力をあげて取り組んだ。

「各コーナーの企画を考えたのは、テリー伊藤さんやおちまさとさんたち精鋭です。『おもしろければ何やってもいいんだ』と上げてくる企画がめちゃくちゃだけどおもしろかった(笑)。今ならコンプラ違反で間違いなくアウトです」

 その中から生まれたのが今も語り継がれる過激な企画の数々だ。

「人間性クイズ」は、ロケ終わりのホテルを舞台に、ポール牧やチャンバラトリオの結城哲也という「師匠」が若手芸人を呼び出し「わかってるよな?」と肉体関係や、SMプレイにもっていくドッキリ。

 若手芸人たちは驚き、うろたえ、何とか逃れようとする者、早々に諦めて観念する者、いろいろな顔を見せた。

 また、本人には知らせず、芸人の家族を呼び出して別室に待機させ、隠し撮りで「芸人とセクシー女優の合コン」の様子を見せた。家族に「スケベ顔」を見られたとわかった時の絶望の表情‥‥。

 カメラの前で見せる顔とはまったく違う「裏の顔」は、まさに「人間性」がむき出しで、視聴者は爆笑したものだった。

 ただ、その裏側では「人間性クイズ」を成立させるための綿密な計画と周到な準備がなされていた。

「ドッキリまで持っていくには緻密な連携が必要でした。いかに自然な流れで師匠と若手を2人きりにするか、どこに隠しカメラとマイクを置くか、別室のモニターに流れる映像は鮮明に撮れているか。小さなミスで企画が台なしになるので、緊張しました」

佐々木敦規(ささき・あつのり)1967年生まれ。演出家・映像ディレクター。フィルムデザインワークス取締役。「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!」「とんねるずのみなさんのおかげでした」「IPPON GP」などのバラエティー、K-1やプロレスなど格闘技番組の演出を経て、ももクロのステージ演出を手掛ける。

取材・構成/茂田浩司(ライター&編集者)

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