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記事全文を読む→金難民〜金塊密輸に魅せられた人々〜〈第5回「ギャラ500万円」「那覇ルート」プライベートジェット密輸の核心〉(2)3億の投資で月800万円
スキーム全体の利回りは消費税分の8%。それを現場サイドと出資者サイドでトリハンにする。取り分を半分(折半)にする、裏社会でよく使われる隠語である。つまり柳沢たちの取り分は4%だ。
だが億ともなると、柳沢らとしても手持ちの現金だけでは足りない。そこで組織の上層部から引っ張った。
確実に利回りが出る話として持ちかけ、2%のリターンを条件に借り入れる。差し引き2%が柳沢たちの純利益になる仕組みだ。こうして2~3億円のカネを集め、このビジネスに投じた。
「月に400ぐらいは手元に残ってたからね。もちろん上にも400バックしてのこと」
2~3億の投資で月800万の利益─それが1年間続いた。当時の金のレートから逆算すると、月に40キロ前後の金が動いていたとみられる。
プライベートジェットでの密輸は、柳沢たちとは別のところでも動いていた。
16年6月8日、ヤクザ組織が関わる前代未聞の金密輸劇が発覚した。
マカオから金塊112キロをプライベートジェットで国内に運び込もうとしたとして、稲川会系組幹部の男ら6人が逮捕された事件だ。免れようとした消費税は約3800万円。組幹部の男らは同じジェット機で香港に40回以上渡航しており、金の密輸を組織的に繰り返していたとみられていた。
この密輸事件を追う中、一人の男と出会った。保坂(仮名)。金密輸の黎明期から暗躍し、今も相対屋(あいたいや)として業界に根を張る。そしてその保坂から、思いがけない言葉を聞くことになる。
「実はこの事件、自分が発端なんです」
プライベートジェットという手口を授け、組幹部の男たちを香港ルートの先駆者・日本人のSにつないだというのだ。
保坂は当時、マカオに住んでいた。カジノのVIPルームを経営しながら、マネーロンダリングや金の換金に関わっていたことから、組織と関係を持つようになった。この拠点が、香港と日本をつなぐ要になっていた。
では、密輸劇はどのように実行されたのか。実行犯にたどり着いたのは、さらに取材を進めた中でのことだ。
その一人が重い口を開いた。
「今回逮捕された組幹部と旧知の仲の、A氏という桁違いのカネを動かす有名実業家がいます。A氏は事件とは直接は関係がないものの、その方と組幹部とのビジネスの延長線上で、この事件は起こりました」
香港は中国の統治下にある。不法に得た利益でなくとも、金の換金には税金の申告問題など複雑な手続きが伴う。資金の出所を問われれば、説明のつかないカネを持つA氏にとっては都合が悪い。だから日本で、正規ルートで換金してほしい─手数料(数千万)を払う、という依頼だった。
実行犯の一人は続けた。
「本来ならこの換金ビジネスだけで手数料を貰えばよかったところ、密輸をすればさらに消費税分も手に入る。そうして爪を伸ばしたことがすべての始まりでした」
高木瑞穂(たかぎ・みずほ)ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に風俗や犯罪事情を取材、執筆。「売春島『最後の桃源郷』渡鹿野島ルポ」(彩図社)、「ルポ 風俗の誕生」(清談社Publico)など著書多数。
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