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記事全文を読む→「猪木VSアリ戦」50年の真実〈最終回〉(3)猪木は何と闘っていたのか
15ラウンド、猪木はなおもスライディングキックでアリを追い続ける。ラウンドを重ねるごとに、アリの左足の太ももは赤から紫へと変色していった。試合翌日、猪木はこう語った。
〈朝、わたしの足の甲やスネにこんなアザができていた。わたしの足がこれほどなんだから、アリの左足は相当ダメージを受けているはずだ〉(東京スポーツ・76年6月29日)
ジャーナリストのアーロン・タレントは「猪木戦で負った血栓症の後遺症の影響で、アリはその後誰もノックアウトできずに終わった」と述べた。公平に見て、猪木戦でアリは引退を早めたのだろう、と。
新聞各紙は「世紀の茶番劇」「真昼の欠闘」「世紀の上げ底ショー」と酷評。NHKのキャスターに至っては「予定通り引き分けでした」と報じた。永里高平は〈立ったアリと寝た猪木の姿しかとらえることの出来なかった人間もいた〉と手記で嘆いた。
〈この試合の凄みは誰よりも当事者であるアリと猪木が知っているはずだ。試合後、恐怖から解放されたアリの顔が、お互いを称え合うかのようにガッチリ握り合った二人の拳が、何よりも雄弁にそれを物語っている‥‥〉(前掲書)
理不尽な条件下で猪木が得たものは、少なくない。
「猪木さんが本当に闘っていた相手はアリだけではない。不当なルール変更、それを公表できない圧力、そして『プロレスは八百長だ』という世間の偏見とも闘っていた。実況しながら、本当のことを何一つ言えなかった私も苦しかったですが、猪木さんはそれ以上に苦しかったことでしょう。50年かかって、ようやく真実が語られるようになってきた。私の証言も、その一環なのです」
舟橋は今も確信する。猪木VSアリ戦は、史上最高の試合の1つだった、と。酷評されながらもこの年、猪木の歩みはさらに加速した。第二の故郷ブラジル遠征、アンドレ・ザ・ジャイアントとのシングルマッチ、韓国遠征、ウィリアム・ルスカとの再戦に勝利、パキスタンの英雄アクラム・ペールワンとの死闘に激勝─。アリ戦は燃える闘魂をさらに燃え盛らせたのだ。
舟橋慶一(ふなばし・けいいち)1938年生まれ。62年にNET(日本教育テレビ/現テレビ朝日)入社。アナウンサーとして「ワールドプロレスリング」実況など多数の番組を担当。
福田竜一(東京新聞)
写真提供/山内猛
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