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Posted on 2026年08月22日 18:00

美輪明宏(6月20日没)〈いしだ壱成〉舞台の心得まで手取り足取り叩き込まれた「飲み会に行くぐらいならお家に帰りなさい」/26年夏「送り火」インタビュー・追憶「忘れがたき人々」

2026年08月22日 18:00

 妖艶な芸術家─。シャンソン歌手で俳優の美輪明宏(享年91)は、歌や演劇などを通して独自の「美」を表現してきた。その薫陶を受けた1人が俳優のいしだ壱成だ。恩師に教わった“美輪メソッド”とは‥‥。

「美輪さんと初めて仕事をしたのは、私にとっての初舞台でした。当時、19歳でテレビドラマと映画を合わせて数本出演したほどの浅いキャリア。お芝居を誰にも習うことなく我流でやっていました。そんな私に美輪さんが舞台での演技を手取り足取り叩き込んでくれたのです」

 2人が共演したのは94年公開の舞台「毛皮のマリー」。アングラ演劇を牽引した劇作家・寺山修司氏の戯曲のリメイク公演で、美輪が主人公・毛皮のマリー、いしだが美少年・欣也役を演じた。ちなみに、いしだの配役は美輪のキャスティングである。

「ある日の稽古中に美輪さんから、『アナタ、天才ね』とお褒めの言葉をいただきました。正直、舞い上がりましたよ。というのも、私は小学生の頃から戯曲が好きで、有名作品に出演していた美輪さんの大ファンでしたからね。ところが、そんな夢心地も一瞬で吹き飛びました(笑)。『天才だからって才能に溺れちゃダメ。10年もたないわよ。20年、30年、40年とこの先やっていくつもりなんでしょ』と釘を刺されたのです。要は努力をしなきゃダメだと。さらに、『あなたが10年、20年と俳優を続けた頃に何をしていたらいいかわかる? 演出、照明、音響、美術を全部1人でできるようになりなさい。凡庸な俳優じゃないんだから、できるようにならなきゃダメよ』ともおっしゃられて‥‥。情報量が多くて、19歳で咀嚼するのは大変(笑)。喉につっかえながら飲み込んでいました」

 美輪の指導はスパルタ式とは正反対。

「壱ちゃん、こっちいらっしゃい」

 と、いつも穏やかな口調で導いてくれたという。

「演技を頭ごなしに否定されることはほとんどありませんでした。最初の頃に教わったのは、『お芝居の意識をどこに向けるか』について。舞台上で美輪さんに『今どこに意識を向けていた?』と聞かれて、『3列目ぐらいです』と答えると、『ダメよ。目線もそうだけど、意識をいちばん後ろの席まで飛ばしなさい』と熱弁するのです。いわく『前のほうにいるお客さんはファンしかいないの。つまり、私たちの芝居がよかろうが悪かろうが、泣いて笑って喜んでくれる。むしろ、意識するのはA席、B席って言われている後方エリア。そこのお客さんたちの心をドーンと突き動かさないと、舞台ではお金が取れないわよ』と。これは口酸っぱく言われました」

 教えの中には「禁じ手」がいくつかあって、

「アドリブは『三流以下のすること』だと教わりました。チームで作っている作品に対する冒涜であり、脚本家に対する越権行為にも該当するわけです。『戯曲は楽譜。ベートーヴェンの楽譜にわざわざ変な音を入れないでしょ』と、妙に説得力のある言い回しだったのを覚えています。あと、役者同士の飲み会もNG。『稽古が終わったら、お家に帰って、お風呂に入って、ご飯を食べて、台本を読んで明日に備えなさい。それがプロ。酒飲んでお互いの傷を舐め合ってどうするの?』という考えでした。舞台の打ち上げでも、美輪さんは最初の乾杯までしかいなかった印象があります」

 そして、いしだにとって演技の一丁目一番地になっているのが、「舞台上で3~4つの視点を持つ」ということだ。

「まず、相手役と対峙するリアルな視点、客席から自分が立っている舞台を見た視点が基本中の基本。そして、調光室からの視点で、照明がどのように自分や相手役に当たっているのかを意識します。あとは、舞台袖の上手と下手から見た視点。これは、ポジショニング、体の角度、相手役をどう効果的に魅せるか、といった要素を意識するためのものです。いずれも、私自身がワークショップなどで『基本のキ』として、若い俳優さんに教えています。美輪さんの教えを後世に伝えていくのが私の使命ですから」

 師匠の「金言」は次世代へと語り継がれていく。

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