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記事全文を読む→「北朝鮮製パソコン」を使用したら人民が金正恩に「中身を自動監視」「データ書き換え」される「怖いOS」
パソコンに保存した文書は自分で開かない限り、中身は変わらない。そんなのは当たり前の話だ。だが、その当たり前が通用しないOSを、北朝鮮が作っていた。
USBメモリーをパソコンへ差し込む。中の文書は開いていない。それでもUSBメモリーを取り外すと、ファイルの内部データが書き換わっていた。
2015年、セキュリティー研究者のフローリアン・グルーノウ氏とニクラウス・シース氏が北朝鮮のOS「レッドスター3.0」を解析し、ドイツ・ハンブルクの国際会議で報告した動作だ。
北朝鮮では韓国ドラマを視聴しただけで、最大15年の強制労働が科される。それでも映像は国内に流通している。誰かがUSBに入れ、国境を越えて持ち込み、人づてに渡していくのだ。レッドスター3.0はそのUSBに、端末の痕跡を残していた。
このOSは朝鮮コンピューターセンターが開発したLinux系で、2013年頃に登場した。カレンダーは金日成の生年である、1912年を元年とする「主体暦」を採用。画面下にアイコンが並ぶデザインは、当時のMac OS Xに酷似している。だがその裏では、利用者に気づかれない処理が動いていた。
研究者がDOCX形式の文書を入れたUSBメモリーをレッドスター3.0に認識させると、ファイル内部の特定領域へ32バイトのデータが書き加えられていた。端末のハードウェア情報から生成されたとみられる識別符号が、開いてもいないファイルに勝手に刻まれるのだ。別の端末で同じファイルを扱えば、新たな印が加わる。対応する形式はWord文書、韓国の文書作成ソフトの形式、画像、音声と複数に及ぶ。
保安ソフトなしにはデータの複製や移動ができず
これが何を意味するのか。当局が識別情報と登録端末を照合すれば、そのファイルがどの機器を経由したかを推定できる可能性がある。研究チームは2015年12月、ネット上のJPEG画像から、少なくとも7つの異なる端末環境が残したとみられる印を確認している。
では、利用者が印を消そうとするとどうなるか。「opprc」と呼ばれるプログラムがOS内部の保護対象ファイルを監視しており、編集や削除を試みると再起動を発生させる。構成次第では再起動が繰り返され、最終的に操作不能に陥る。解除にはroot権限と複数のプログラムの停止が必要で、通常の利用者が簡単にたどり着ける手順ではない。
こうした仕組みを、レッドスター3.0はウイルス対策ソフトの顔をして動かしていたのである。守っているのは利用者ではなく、国家が仕込んだ監視機能だった。
2025年7月、北朝鮮情報などを発信するメディア「アジアプレス」が北朝鮮内部の取材協力者の証言として、党や行政機関で「国産パソコン」への切り替えが始まったと報じた。新型機はOSにレッドスターを搭載し、USBメモリーやSDカードを差し込めない設計だ。
「盾プログラム」と呼ばれる保安ソフトなしにはデータの複製や移動ができず、本体のネジまで封印されている。旧型のOSはファイルに印を刻んだが、新型機では外部媒体を使う行為そのものが封じられている。
国家が国民のパソコンの中に入り込み、ファイルの行き先を記録する。北朝鮮でパソコンを持つことは、同時に政府の監視下に置かれることにほかならない。
(ケン高田)
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