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記事全文を読む→「世代論」で読むプロ野球〈松坂世代・続〉(1)松坂1人の物語ではなかった
破格の世代だった。時代の顔を背負うことのできる逸材が、これほど揃っていたとは。カリスマたちの競合は、それぞれが「自分の役割から逃げない」戦う姿勢を見せつけたことに醍醐味があった。昭和的な野球の匂いを醸す黄金世代の存在感。怪物・松坂を中心とした群像劇に迫る!!
1980年度生まれの選手たちは、平成のプロ野球を駆け抜けた世代だ。だから彼らを「昭和的」と呼ぶのは、単に生まれた元号の話ではない。もっと感覚的に言えば、個人がチームの看板を背負い、勝敗の責任を自分の身体で引き受け、痛みも不振も言い訳にしない‥‥そういう古いエース像、主砲像、守護神像を最後まで濃く残した世代だった。
その象徴が松坂大輔であることに異論はない。98年夏の甲子園で横浜高校を春夏連覇に導き、プロ入り後も西武、日本代表、MLBで常に「怪物」として見られ続けた。NPB通算では114勝65敗、防御率3.04。数字だけを見ても一流だが、松坂の本質は数字以上に「物語の中心から降りられなかったこと」にあった。
「松坂世代」という言葉は、あまりにも強い。98年夏の甲子園で、横浜高校の松坂大輔が残した記憶が巨大すぎたため、この世代は最初から1人の怪物の名前で語られることになった。
延長17回、250球、翌日の救援、決勝ノーヒットノーラン。普通なら1つでも伝説になる出来事を、松坂はひと夏でまとめて背負ってしまった。だから80年度生まれの選手たちは、プロに入る前から「松坂と同じ学年」という文脈の中に置かれた。
しかし、時間が経つほどに明らかになったのは、この世代が松坂大輔1人の光ではなく、複数のカリスマが同時に走った世代だったという事実である。杉内俊哉、和田毅、藤川球児、村田修一、新垣渚、館山昌平、小谷野栄一、東出輝裕‥‥と先発、救援、主砲、職人型の野手まで、役割の幅が広い。単に「いい選手が多かった」というより、各ポジションに“その時代の顔”がいた。
しかも彼らは、いかにも昭和的な匂いを残していた。もちろん、彼らが主に活躍したのは平成である。だが、そのスター像は令和的な分業型・効率型とは少し違った。先発は長いイニングを投げ、救援は連投を恐れず、主砲は責任を一身に背負う。勝った時だけでなく、打たれた時、打てなかった時、壊れた時でさえ、人前に立つことを求められた。彼らは数字以上に、「逃げない姿」を見られる世代だった。
この世代の面白さは、松坂という巨大な看板に対して、他の選手たちがそれぞれ別の方法で「自分もいる」と証明していったところにある。杉内は左腕の美学で、藤川は一球の爆発力で、村田は主砲の矜持で、和田は長寿と進化で。
松坂世代とは、松坂の陰に隠れた世代ではない。松坂という基準があったからこそ、それぞれが独自の戦い方を研ぎ澄ませた世代だった。
ゴジキ:野球評論家・著作家。「データで読む甲子園の怪物たち」(集英社新書)ほか著書多数。「マネジメント術で読むプロ野球監督論」(光文社新書)が重版出来。発売前から重版となった最新刊「システムで読む甲子園」(カンゼン)が絶賛発売中。Yahoo! ニュースエキスパート。
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