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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈警察官の「発砲」で振りかざされた玉川徹の暴論は現場への死の宣告〉
事件現場で警察官による「拳銃使用」が注目される事態が続いている。
7月22日、熊本県合志市のコンビニ駐車場で、強盗犯の前田詩音容疑者が包丁を持って迫り、警察官が発砲する事案が発生。続く8月4日には、大阪府河内長野市の路上で刃物を手に暴れていた土屋重吉容疑者に対し、引き金を引いた。
どちらの現場も事前警告や威嚇射撃が行われており、警察本部は「職務執行として適正だった」と発表。だが被疑者が死亡した大阪の事案を巡って、メディアの反応が大きく揺れた。
事件翌日に放送された「羽鳥慎一モーニングショー」では、コメンテーターの玉川徹氏が「結果として相手が亡くなっている。これは射殺になる」「警察官がいわゆる死刑にしてしまった」と持論を展開。この過激な論調は、世間で大きな物議を醸した。
言うまでもなく、死刑とは司法手続きを経て犯罪に科される刑罰で、警察官が執行する性質のものではない。拳銃の使用は目前の凶行から市民や自分を守る「正当な実力行使」である。警察官職務執行法第7条で、必要最小限度の範囲内に限って認めているのはそのためだ。
玉川氏の暴論が何よりも危険なのは、犯人の身勝手な「罪の重さ」と、警察官が取り締まる「瞬間の危険性」を完全に混同していることにある。
この先も「玉川発言」の生んだ余波が現場に悪影響を及ぼすおそれは、計り知れない。凶悪犯と対峙した時、「ここで撃てばメディアに叩かれる」――その迷いが脳裏によぎることによる硬直。生死を分けるコンマ数秒の遅れが、最悪の事態を招く可能性は大きい。
玉川発言こそ現場警察官への死の宣告である。
凶器を振りかざして突進する相手の肩や足に銃弾を命中させるのは至難の業で、映画やドラマの中だけの話にすぎない。
だが現場で懸念されているのは、拳銃使用の「その後」に待ち受ける法的リスクの重みだ。
実際、03年には奈良県警の警察官が「殺人罪」の被告人として法廷に立たされている。車上荒らしの犯人が乗る逃走車両が突進してきたため、警察官が発砲。命中した男が死亡すると、遺族側は約1億1800万円の国家賠償請求訴訟と刑事告訴に踏み切った。結果として無罪判決を勝ち取ったが、これこそが直面する法的リスクの実態なのだ。
拳銃を発砲した後には、過酷な現実に直面する。防犯カメラなど客観的証拠がなければ、当事者の説明だけでは正当化されにくい。適法でも遺族が納得するとは限らず、厳しい調査が待っている。その間、「前線から外される」「昇進に響く」という不安に悩まされ続けるのだ。
冒頭の事案のように、上層部がリスクを恐れずに現場を守り、真面目に働く警察官が「萎縮」しない組織であってほしい。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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