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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈問われる「刑事の勘」の価値。AI導入で捜査現場は大激変〉
2026年7月10日、高市政権は人工知能戦略本部の会合を開き、専門業務を支える「バーティカルAI」の開発・実用化を推進する方針を表明した。全19分野のうち警察も重点支援領域に指定され、官民の集中投資が始まる。
これにより、多数の捜査員を投入する「人海戦術」主体の捜査から、蓄積された情報を最大限に活用する「データ駆動型」の捜査体制への移行が一気に加速することになった。各都道府県警で温度差はあるものの、国の方針に先駆ける形で、すでにAIの活用が現場では始まっている。
警視庁刑事部の「SSBC(捜査支援分析センター)」では、逃走する容疑車両の車種や、被疑者の容姿・歩き方の特徴まで自動で判別。夜間や悪天候でもターゲットを特定できるようになり、防犯カメラで追いかける「リレー捜査」の速度を劇的に向上させた。
これまで手作業で行われていた膨大な捜査報告書や供述調書の読み込みも、AIがまとめて解析する。そこから、人間が見逃していたかもしれない事件関係者の意外なつながりを客観的に検知し、事件のチャートや逃走経路、人物相関図まで描き出す。
今回の国を挙げた方針決定は、全国レベルで警察の捜査能力を飛躍的に高め、「最強の治安維持組織」へと押し上げる重大な転換点となる。ただし、AIはあくまでも捜査員の「目」や「耳」を補い、記憶力を強化する「道具」の一つにすぎない。提示された分析データの中から的確な「スジ読み」を行い、何がホシの逮捕につながるのかを見抜く「選別能力」が何よりも問われる。
便利ゆえに依存してしまいがちだが、AIは責任感や正義感がないことも忘れてはならない。例えばAIが「被疑者である確率は85%」と弾き出したらどうなるか――高度情報化社会で育ってきた若い刑事ほどそれを鵜呑みにし、AIに合わせる形で証拠を集める傾向が見られる。だが俺が捜査した事件でも、予期せぬ人物が真犯人だったケースは一度や二度ではない。後になって「AIの予測に従いました」という言い訳は通用しない。裏付け捜査を怠り、冤罪事件を引き起こすような事態は絶対にあってはならない。
進化したテクノロジーが導入されれば、現場でベテランとの「対立」も危惧される。実際、92年に全国でDNA型鑑定が本格導入された当時も、科学捜査への不信感からベテランを中心に激しい反発が起きた。自分たちの仕事や存在意義が奪われるのではないかという葛藤は、いつの時代も巻き起こる。あの時、変革を受け入れられない昭和世代の刑事は容赦なく淘汰された。AI時代にオレの取り調べは通じるのだろうか。もはや靴底を減らす泥臭い捜査や、長年培った経験則に基づいた「刑事の勘」も過去の遺物となるのかもしれない。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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