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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈栃木強殺事件の凶悪手口の裏側。トクリュウの募集トレンドは少年〉
栃木県上三川町の民家で5月14日、69歳の女性と愛犬が殺害される強盗殺人事件が発生した。警察は匿名・流動型犯罪グループ、通称「トクリュウ」が関連した犯行と判断し、指示役の竹前海斗と妻の美結、リクルーター役の18歳の少年、実行役の16歳の少年4人を逮捕。海外に逃亡した主導役とみられる益田和彦を公開手配した。
俺はこの一報を聞いて、違和感を拭いきれずにいる。これまでのトクリュウは末端の駒を使い捨てにする一方で、計画性と現場の統率力は徹底されていた。実行役に1人は、「経験者」を組ませるのがセオリーだったはずだ。
対して今回の事件はトクリュウとは思えないほど、あまりにも杜撰だ。実行役は全員少年で、現場をコントロールできる大人はいない。その上、周囲の目を引く白い高級外車で乗りつけ、白昼堂々と目出し帽に上下黒服姿で現れている。無計画な手口は、素人仕事としか思えなかった。
この「劣化」とも受け取れる稚拙な犯行の背景には、昨年1月に導入された「仮装身分捜査」の成果が大きい。捜査員が架空の身分証を使い、闇バイトに潜入して組織に接触する新手法は、昨年中に13件実施し、5人の実行役を逮捕した。トクリュウにすれば、首謀者まで特定されるリスクが急拡大。従来のやり方を変える必要に迫られた。行き着いた策が、警察官では絶対になりすますことができない「本物の高校生」の投入だ。
リクルーターはSNSなどで募った1人の少年に、友人や仲間を集めさせる。恐るべきは、「子供の特性」を極めて冷酷に利用している点だ。精神的に未熟な少年は、4人も揃うと特有の集団心理に支配される。誰かが「やっちゃえ」と口火を切れば、凶悪な犯罪であろうと、その場の「ノリ」だけで簡単に一線を越えて実行に向かう。
指示役の竹前夫婦は容疑を否認しているものの、少年たちを操っていれば、共謀共同正犯が認められる可能性は高い。ナイフとバールを凶器に使用している時点で、被害者が死んでも構わないという殺意がある。「未必の故意」があったことから免れない。
強盗殺人罪の法定刑は、死刑か無期拘禁刑に限られる。16歳の少年たちの場合、家庭裁判所から検察官に送致される「原則逆送」の対象となり、刑事裁判の場に立つ。少年法により死刑は科されない。なれば無期だが裁判所判断で、「10年以上20年以下」の有期拘禁刑に軽減される可能性が極めて高い。
たとえ厳罰に処しても、トクリュウによる少年リクルートの抑止効果は期待できない。これからも小遣い欲しさに手を染め、ゲーム感覚で凶悪犯罪に加担。浅はかな「武勇伝」への憧れも、トクリュウに都合よく利用される。警察の潜入捜査を防ぐ「若い人材」は消費され続け、低年齢化と凶悪化はますます加速するだろう。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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