事件
Posted on 2026年07月25日 10:00

佐藤誠「取調室の裏側」〈不服申立禁止で浮上した権威欲。歪んだ検察組織の不都合な実態〉

2026年07月25日 10:00

 2026年6月16日、刑事裁判をやり直す「再審制度」で、検察の不服申し立てを「原則禁止」とする刑事訴訟法改正案が衆院本会議で可決された。

 例えば「袴田事件」の再審請求では、検察の抗告によって審理が長期化。逮捕から再審、無罪確定までに実に58年もの歳月を要した。今回の法改正には、冤罪被害者の救済を阻んできた「再審の壁」を解消する狙いだ。だが「原則」という言葉の裏には、「十分な根拠がある場合」に限り例外的に抗告を認めるという規定が残されている。事実上、検察に逃げ道や裁量を残した形で、これでは看板倒れの「言葉遊び」だ。

 しかも、動機が検察の権威欲なのだから開いた口が塞がらない。検察にとって再審は、組織的敗北である。組織防衛のために検察は「引き延ばし」で抵抗するのだ。実は冤罪には「検察メカニズム」が存在する。どれだけ捜査を尽くしても完全な事実がわからない場合、検察は「最も整合性が高いストーリー」を事実としてすり替えるのだ。こうして辻褄が合う人物が犯人になってしまう。恐ろしいのは、検察が、その整合性すらも作り出してしまう点だ。ツールになるのが「被疑者の供述」である。切り貼りをして、不利な断片だけを証拠として採用。それを一方的に、マスコミにリークすれば「人工的な真実」の一丁上がりである。

 断言したいのは、そのような蛮行を平然と行えるのは、検察官が捜査現場で泥臭い経験をしたことがないからだ。俺たちは真夜中まで地道な聞き込みを続け、真冬の凍てつく山中や河川敷でも捜査を重ねる。毎日のようにご遺体と対面し、その無念を肌で感じてきた。検察官は「法のエリート」を自認していても、そうした凄惨な現場を知らない。だから血の通った人間の「心の湿度」を理解することができないのだ。

 彼らは取り調べを、被疑者を機械的に落とす作業だと勘違いしている。だから密室で迎合供述の強要や恫喝、人格批判が繰り返されてきた。同年6月24日、取り調べ中に「検察庁を敵視するのは反社」と暴言を吐いた元東京地検特捜部の検事に対し、刑事裁判を開くことが決定した。検察の取り調べが機械的な「素人作業」である証左にほかならない。

 人間は精神的に極限まで追い込まれると、防衛反応として心を閉じる。被疑者に自分の意志で真実を供述させるには、メンタルに「余白」と「逃げ道」を与えることが不可欠だ。いかに自分と向き合える状態を取調室で作れるのか。それこそが真実を語るための絶対条件なのだ。国民も検察の「本性」に気づき始めている。今回も、例外規定という逃げ道を死守し、組織防衛に走る姿は浅ましいと言うほかない。

 自浄作用を持った組織に変わらなければ、大真面目に組み立てる歪んだストーリーとともに、日本の司法そのものが完全に崩壊するだろう。

佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。

佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/

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