芸能
Posted on 2013年02月08日 09:58

百恵と淳子、身を削って提供された作品

2013年02月08日 09:58

 桜田淳子と山口百恵が活躍した70年代には、すぐれた歌の作り手もまた、数多かった。従来からの「職業作詞家・作曲家」がキャリアを見せつければ、ここに気鋭の「シンガーソングライター」もまた、新風を吹き込む。相乗効果は、2人にさらなる輝きをもたらした─。

桜田淳子の初代ディレクターであるビクター・谷田郷士は、中島みゆきのもとを訪ねていた。73年のデビューから4年が経過し、これで淳子との仕事はひとくくりとなる。

 みゆきへの依頼は、淳子への置き土産として“これまでと違う歌世界”を見せたかったからだ。

「私もいろいろ作っていますが、簡単じゃないんですよ。1曲を作るのにベッドを5回も6回もグルグルしてるんだから」

 みゆきらしい表現で曲作りの苦悩を口にする。それでも、了承した彼女は2曲の書き下ろしを谷田のもとへ届けた。谷田は、まるで違う曲調ながら、いずれも高いドラマ性であることに驚いた。

「どちらかを落とすことなどできず、シングルのA面で連続リリースという形になりました」

 前者が「しあわせ芝居」(77年11月)、後者が「追いかけてヨコハマ」(78年2月)である。77年のみゆきは、自身の「わかれうた」(9月)が初めてチャート1位に輝くなど、才能が泉のようにあふれていた時期だったのだ。

 その「しあわせ芝居」の発売から数日後、筆者は目の前で歌を聴いた。熊本・天草の市民体育館で行われた淳子のショーで、中1からの念願がかない、本人を見ることができた。テレビで観るよりもさらに脚が細く、整ったバストラインに目を奪われた。

「皆〜、私の新曲、もう聴いてくれた?」

 その問いかけに、筆者と同じ男子高校生たちの返事が地響きを立てる。歌が始まってからも、せつないバラードであるにもかかわらず、その熱狂が続く。

 淳子にとって3番目に高いセールスを誇った曲であり、大人の歌手へ歩を進めた瞬間だった。

 翌78年には同じ会場で山口百恵の公演を観た。この年の紅白で史上最年少の赤組トリを務めるほどの活躍を見せていたが、原動力となったのは阿木燿子・宇崎竜童のコンビだ。78年も「プレイバックPart2」(5月)を筆頭に、立て続けに夫婦で作品を提供しているが─、

「見てよ、ここ、円形脱毛症になってるでしょ?」

 宇崎は、百恵のレコードディレクターである川瀬泰雄にそう言いながら後頭部を見せたこともあった。

 川瀬はプロデューサー・酒井政利の飛躍した発想─たとえば「口パクで歌わない歌」とか「ケロケロってテープが戻るような曲」を音楽的に構築し、イメージを固めてから宇崎らに発注していた。

「こちらで作っているイメージに沿ってもらうために、宇崎さんにも何度もダメ出しをし、手直しをしてもらった。精神的にずいぶんと追い込んだことは間違いなかったですね」

 ベッドでのたうち、髪が一時的に抜けながら、2人の少女のために「身を削った作品」が重ねられていた‥‥。

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2026年01月14日 07:30

    昨年あたりから平成レトロブームを追い風に、空前の「シール」ブームが続いている。かつては子供向け文具の定番だったシールだが、今や「大人が本気で集めるコレクターズアイテム」として存在感を放つ。1980年代から90年代を思わせる配色やモチーフ、ぷ...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    社会
    2026年01月19日 07:30

    鉄道などの公共交通機関で通勤する人が、乗車の際に使っている定期券。きっぷを毎回買うよりは当然ながらお得になっているのだが、合法的にもっと安く購入する方法があるのをご存じだろうか。それが「分割定期券」だ。これはA駅からC駅の通勤区間の定期券を...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    社会
    2026年01月22日 07:30

    今年も確定申告の季節がやってきた。「面倒だけど、去年と同じやり方で済ませればいい」と考える人は少なくないだろう。しかし、令和7年分(2025年分)の確定申告は、従来の感覚では対応しきれないものになっている。昨年からの税制の見直しにより、内容...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    注目キーワード

    人気記事

    1. 1
    2. 2
    3. 3
    4. 4
    5. 5
    6. 6
    7. 7
    8. 8
    9. 9
    10. 10
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/2/3発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク