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Posted on 2026年10月04日 10:00

江上剛が選ぶ今週のイチ推し!〈「政治で生きる人」に任せないでまずは身近な問題から考えよう〉

2026年10月04日 10:00

「政治とは何か」
宇野重規・著(講談社現代新書/1210円)

 政治学者の著者は、以前、「実験の民主主義」(中公新書)において、ファンダム(ファンの集団)に民主主義を再生する力があると説いて話題になった。本書では、政治を正面から捉えることで、民主主義を他人事ではなく、我が事として捉えようと試みる。

 著者に言わせれば、戦後の政党制民主主義は、「複数の集団間の競争があればそれを民主主義とみなす」という「弱い信念」に基づいた妥協の産物であるらしい。

 これは興味深い。全体主義に勝利した結果、戦後民主主義社会が生まれたと信じている私たちの脳天を、後ろから殴りつけるような結論だ。

 それにしても、我が国の政党政治の現実は悲惨である。二大政党制を目指して小選挙区比例代表並立制を導入したが、政権交代を経ても二大政党制は定着せず、多党化が進み、民主主義への信頼が揺らいでいるのが現状だ。著者はこうした現状に「政党論の刷新」が必要であると言う。

 最も興味深いのは「エキセン」批判である。これはエキストリーム・センター(極端な中道)の略語であり、現在の格差社会、分断化は、表面的にはリベラルな価値観を装いつつ、新自由主義的な改革を実行した中道左派政権(エキセン)が生み出したのだという批判である。

 こうした「エキセン」への批判も、トランプ政権誕生の背景の一つとなった。その結果、「中道左派」の求心力が低下し、政治勢力の分極化が進んだ。

 著者は政治とのかかわりについて「なぜ政治をしなければならないのか」と問いかける。

 陰謀論がまかり通り、伝統的な社会は崩壊し、人と人との繋がりが希薄化し、人々は問題解決を中央の権力に依存するようになる。民主的専制の始まりである。著者は、人々は、「いま・ここ」すなわち「ノー・ロング・ターム(短期的思考がすべて)」になりがちだと警鐘を鳴らし、人々の繋がりを回復させる「政治2.0」を提唱する。

 これは自分の当事者意識が及ぶ範囲からスタートし、「政治を取り戻す」ことだ。ひとりひとりが身近なところから「何が善なのか」を考え、共存の道を探るところから始めるのである。

 現在、政治は私たちから遠く離れてしまった存在、無関係な存在になってしまったように思える。それは「政治で生きる人」に任せきりになってしまったからではないか。これが民主主義の危機を招いているのだ。

 著者の言う通り、身近なところから「政治の営みを活性化させる」ことが、私たちには求められているのだろう。「『政治』は人間にしかできない」のだから。

江上剛(えがみ・ごう)1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。77年、旧第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に入行し、人事部や広報部を経て、支店長などを歴任。02年に『非情銀行』で作家デビュー。10年、日本振興銀行の経営破綻に際して代表執行役社長として混乱の収拾にあたる。「翼、ふたたび」など著書多数。

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