大地真央が演じる女将の「そこに愛はあるんか?」の台詞が印象的な、アイフルのCM。
その「女将さん」と今野浩喜が演じる板前風のキャラクターで、当初はどこぞの料亭か旅館が舞台の設定なんだろうと思っていたが、回を重ねるごとに、女将さんが侍、婦警、バスガイド、尼、アーティスティックスイミング選手、果ては格闘ゲームのキャラクター…といった姿で登場するようになり、もはや大地の「ひとりコスプレ大会」の様相を呈している。
で、12月4日から放送されている新バージョンの「女将さん」は、角刈りがビシッと決まった高級寿司店の大将。これが秀逸だった。
カウンター席の客達の中に、IT成金のようなおっさんと、オフのキャバ嬢みたいな雰囲気のアーパーな女が混ざっており、この女が男からもらったと思しきプレゼントやら何やらをカウンターに乗せる。他の客の冷たい視線を無視し、握られた寿司も食べず、スマホで撮影して大声で盛り上がっていると、女将さんが言う。
「すいません、お客さん。もう少し他のお客さんのことも考えてもろていいですか。あと、食べはらへんのやったら握るのやめますさかい、言うてもろてよろしいか」
これにアーパー女が「むかつくんだけど」と言い返すが、女将さんは「魚の命に申し訳ないわ!」とピシャリ。今回は「そこに愛はあるんか?」のキメ台詞はなしで、板前の今野に至っては、やりとりを唖然と見ているだけで、台詞すらない。それでもとにかく、実に痛快なのだ。
こういうふうに、他のお客の迷惑になるような奴や、「何様?」な態度のヤツにしっかり拒否する姿勢を店側が見せれば、カスハラなんてものは起きないだろう。もちろんそれは、店側もしっかりとしたサービスと信用を客に提供した上でのことなのだが。
最近は小売店やスーパーなんかに「私たちはカスタマーハラスメントに対し、厳格に対処します」といった貼り紙を掲げているところをよく見かける。それ自体には何も異論はない。しかし、そういった貼り紙をしている店に入って、一瞥もせず気怠そうに話し、聞き返せば不機嫌な顔で舌打ちしたりするような店員に当たったりすると、客に注文をつけるのはいいが、店員の教育もしっかりしなよね、と思うのだ。「そこに愛がある」ならば、客も店も嫌な思いもしないで済むのに。
ひとつ残念なのは、これが消費者金融のCMであること。先日もアコムの「バンドをしているうだつの上がらない男が妹の結婚式に呼ばれ、長髪を切り、ヒゲを剃り、スーツを買って式に駆け付ける」というCMに対し、SNSなどでは「美談っぽい演出で、妹の結婚式のために借金をするようことを描くな」という非難の声が上がっていた。至極真っ当なことを言っているのに、「お前が言うな」で終わらないことを祈る。
(堀江南/テレビソムリエ)