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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈科学捜査を根底から揺るがした佐賀県警のDNA鑑定不正の闇〉
今年の上半期に全国で懲戒処分を受けた警察官・職員の数は、過去10年間で最多のペースを記録した。下半期になっても不祥事は相次ぎ、9月に発覚した佐賀県警の「DNA型鑑定の不正行為」に至ってはどこまで影響が広がるのか不明なほど悪質だ。同県科学捜査研究所の職員が7年間で632件のDNA型鑑定のうち、130件の不適切な鑑定をしていた件である。前代未聞の異常事態でも、佐賀県警と佐賀地検は「捜査や公判に影響はない」と、幕引きを図ろうとした。
厚顔な対応に批判がやまずに、事案公表から1カ月後に警察庁は特別監察に入った。が、これは猿芝居だ。第三者委員会を設置させないために、先手を打っただけのこと。身内のお手盛り調査そのもので、コトの重大さを理解しているのかさえ疑問だ。
DNA鑑定は「証拠の神様」と呼ばれている。犯罪捜査に導入した1989年当時は、個人識別の確率が「1000人に1人」程度と精度は低かった。それが今では兆を超える「565京人に1人」まで向上している。それゆえ、DNA鑑定の改ざんは、科学捜査の信頼を根底から揺るがす深刻な事態だ。
実際、試料が残っていた124件を再鑑定したところ、8件で異なる結果が出たことが判明した。
この先、公判・再審において弁護側は、違法な手続きで収集された鑑定の結果を証拠として認めない「鑑定排除」や「再鑑定」を求めるだろう。
すでに佐賀県弁護士会には、県警が捜査した事件の当事者から、該当の職員が鑑定に関わったのか、調査依頼があったという。
職務遂行で故意・過失により違法に損害が生じたとして、国家賠償を起こされれば、佐賀県警が被告主体にもなり得る。
それでなくても警察不信は全国的に常在。犯人特定や冤罪防止、身元確認などのためのDNA提供を拒まれることもあり、現場の刑事はやりにくい状況だ。
現場で採取された血液やDNA、押収された凶器の証拠保全は、「チェーン・オブ・カストディ(保管の連鎖)」が基本である。
これは証拠や重要な物品が収集され、法廷に提出されるまでの間、「誰が」「いつ」「どのように」保管と移動処理したのかを連続的に記録し、厳格に管理するシステムのこと。このシステムに不備があれば「証拠がねつ造、改ざんされた可能性がある」とされ、裁判で証拠能力が否定される。警察なら誰でも知っているが、不正に手を染めた職員は、1人で632件のDNA鑑定をしていた。
「短期間で終わらせたと上司に思わせることで、仕事ぶりをよく見せたかった」
動機も短絡的なものだ。
警察庁は鑑定作業を複数人でチェックするよう全国に通達。DNAは噓をつかないが、佐賀県警が噓をついたことの責任追及を怠ってはならない。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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