政治
Posted on 2026年05月17日 10:00

【世界の「最凶独裁者」列伝】「中央アジアの北朝鮮」トルクメニスタンの大統領が「コーランとオレの本以外は読むな」暴走指令

2026年05月17日 10:00

「中央アジアの北朝鮮」と称され、国土の85%が砂漠ながら資源大国である旧ソ連のトルクメニスタンに、かつて「生ける神」として君臨する独裁者がいた。初代大統領サパルムラト・ニヤゾフである。
 自らを「テュルクメンバシュ(トルクメン人の長)」と呼ばせ、この国を私物化した男の統治は、もはや政治というより、誇大妄想の具現化であった。

 ニヤゾフの歩みは、悲劇から始まる。1948年の大地震で家族を全て失い、ソ連の孤児院で育つと地道に出世を重ね、ゴルバチョフに見出されて権力の座に就いた。そしてこの男の本性が露わになったのは、1991年の独立。天然ガスの莫大な富を背景に、前代未聞の奇行に走り始めたのである。

 とりわけ世界を呆れさせたのは、2001年以降に連発した謎の禁止令だった。「トルクメン人の文化にそぐわない」という独善的な理由でオペラ、バレエ、さらにはサーカスの上演を禁止。2004年には「地方の人間は本を読まない。聖典コーランと私の本があれば十分だ」と言い放ち、首都と大学以外の図書館を全て閉鎖してしまったのである。

「私の本があれば」とした豪語したその著書は「ルーフナーマ(魂の書)」。なんと国民はこの本を必読文献とされ、学校の成績から運転免許の取得、昇進に至るまで、この本の理解度が問われたというから開いた口が塞がらない。
 そしてニヤゾフはこう豪語した。
「この本を三度読めば、天国へ行ける」
 いやいや、もはや大統領というより、インチキな予言者である。

1月を自分、4月を母の名に変更した

 エゴの暴走は、時間の概念さえも侵食した。2002年には1月を自らの称号である「テュルクメンバシュ」に、4月を最愛の母の名「グルバンソルタン・エジェ」に改称。果てはパンの名称までも、母の名に変更したのだった。
 首都アシガバットには太陽の動きに合わせて24時間、回転し続ける自身の巨大な純金像を建立し、砂漠の真ん中で常に照らし続けさせたのである。

 一方、この独裁者は水道・電気・ガスの無料化という「飴」で国民の口を封じ、永世中立という名の「鎖国」で外敵を遮断した。文字通り「王国」を築いたニヤゾフだったが2006年、心不全により突如として世を去る。享年66。
 あまりの絶対性に、訃報を聞いた市民は「これは我々を試すための演技ではないか」と棺を見るまで信じなかったという。

 トルクメニスタンの政策に対するゴルバチョフの意見や提案を「自分の国は自分で作る」と言い放ち、断固として受け入れなかったニヤゾフだが、トルクメン語をほとんど話せず、議会での答弁や演説以外ではロシア語を話していたというエピソードも。

 独裁者が砂漠に描いたのは、富と狂気が混ざり合う、歪んだ黄金の夢だったのである。

(山川敦司)

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    芸能
    2026年09月25日 11:00

    9月18日から20日までの「国内映画ランキング」(興行通信社調べ)が9月24日に発表された。9月18日に公開されている織田裕二主演の「踊る大捜査線N.E.W.メトロポリスを駆け抜けろ!」は、約14年ぶりのシリーズ最新作。初登場で2位にランク...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    芸能
    2026年09月29日 14:00

    小栗旬が社長を務める芸能事務所「トライストーン・エンタテイメント」が9月28日に公式サイトで所属俳優・坂口健太郎をめぐる週刊誌報道の内容を否定する声明を発表した。〈その記事が元になり、想像に依る誹謗中傷や事実とは異なる内容の拡散等が見受けら...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    事件
    2026年09月29日 21:00

    韓国の京畿道城南市盆唐区(首都ソウルの南南東約20キロ)にある中華料理店「習近平」に中国人の4人組が秘かに押し入り、スプレー塗料やペンキをまき散らしながら店内の備品を破壊するという「ナゾに満ちた事件」が発生した。聯合ニュースをはじめとする複...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    注目キーワード

    人気記事

    1. 1
    2. 2
    3. 3
    4. 4
    5. 5
    6. 6
    7. 7
    8. 8
    9. 9
    10. 10
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/9/29発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク