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記事全文を読む→【再上映】「ブラックエンペラー」は暴走族の「現在」と「これからどう生きるか」を問う執念の問題作/大高宏雄の「映画一直線」
話題作が目白押しの映画界だが、その陰でひっそりと公開されている作品がある。暴走族として名を馳せた「ブラックエンペラー」を描いた「俺たちの生きた時間」だ。
1982年に公開された旧作の再映である。監督は元ブラックエンペラーの赤坂支部長だった渡辺義充。ブラックエンペラーの暴走ぶりを元暴走族が撮った、生々しいドキュメンタリーだ。
多くの人同様に、全く知らない作品だったが、それには理由があった。82年にあるところで上映されたらしいのだが、調べても上映の場所が映画館なのか別の場所なのか、はっきりしない。
それがある作品との2本立てとして、翌年の83年に相応の数の映画館で上映された事実があった。いわゆる「添え物」である。それさえ、知らなかった。
ある作品とは、83年3月に新宿・歌舞伎町の1館だけで公開され、大ヒットした「BLOW THE NIGHT! 夜をぶっとばせ」。ロマンポルノの鬼才、曽根中生が監督した。
実在の非行少女がモデルの作品だ。しかもその非行少女を本人の高田奈美江が演じたこともあり、話題になった。
スケバン風ロングスカートが勇ましい、高田の力演が素晴らしかった。アイドル的な人気のあった可愛かずみも出演して、彼女のファンも詰めかけたと記憶する。
これが大ヒットしたから配給会社は当然、映画館の数を広げようとする。そこに目をつけたのが「俺たちの生きた時間」だった。両作品で、当時は普通だった2本立て上映を行ったのである。
公開は83年5月14日。都内数館、地方でも上映されたと資料にはある。その時の上映を「凱旋興行」と書いている人がいた。
映画評論家の松田政男だ。公開時、キネマ旬報に載せた批評の中で「35ミリのブローアップ版で、都内での凱旋興行時に初めて見参」したとある。「(見た)渋谷パレス座は、五月末の平日の正午前後にもかかわらず満席に近かった。『夜をぶっとばせ』に牽引された若い観客たちと相見える機会を増幅されて、渡辺義充らはラッキーだった」と締め括った。

ブラックエンペラーを描いた作品といえば、柳町光男監督の長編デビュー作「ゴッド・スピード・ユー!BLACK EMPEROR」(76年公開)がよく知られる。モノクロドキュメンタリーで、こちらはブラックエンペラー新宿支部の面々をとらえた。
おそらく渡辺監督は、この作品に影響を受けたのではないか。とともに、直接の引き金になったのは、1978年12月に施行された「新道路交通法」の存在だろう。その時点で、暴走族への警察の締め付けが強化されたからである。
現役から離れた人も含めて自身と仲間の「現在」を映画で問う
ブラックエンペラーは自身で撮る。撮っておかなくてはならない。そのやむにやまれぬ切羽詰まった衝動が、極限にまでせり上がってきたとおぼしい。
撮影時、自身は第一線を退いていたが、現役で走っていた暴走族の協力を得て撮影を行った。製作の資金難に喘ぎ、完成までかなりの時間がかかっている。
当時、渡辺監督が書いた文章がある。「まさに映画製作そのものを暴走した」(キネマ旬報83年1月上旬号)。まさに、この言葉がすべてを語っている。

バイクの暴走と映画の製作が、同じ土俵に乗っているのである。現役から離れた人も含め、自身と仲間の「現在」を映画で問う。「生きた時間」というより、これからどう生きていくか。
プロフェッショナル、職業的な監督が手掛ける作品とは様相を異にする。一種、プライベートフィルム的な感もあり、それは当時とはまた違った生々しさがあると言うべきか。
今回、亡き渡辺監督の弟がDVD発売を意図し、その過程で公開が決まったと聞く。ブラックエンペラーの執念が突き動かしたのだと思う。
※写真🄫タイムプロ
(大高宏雄)
映画ジャーナリスト。毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。「アメリカ映画に明日はあるか」(ハモニカブックス)、「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2026年に35回目を迎えた。
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