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Posted on 2026年10月17日 10:00

「世代論」で読むプロ野球〈令和の怪物世代〉(1)長打力は勝つための「前提」

2026年10月17日 10:00

 球界でも「Z世代」が幅を利かせる時代だ。日本での成功で収まるのではなく、海を渡りメジャーへ挑んでいく。常勝軍団ではない、勝ち方が出来上がっていないチームを選び、自らチームを変える側に入り、快音をとどろかせる。ヤクルトの主砲は、その打棒で古豪をよみがえらせた。

 日本で三冠王になった打者が、海を渡れば、再び自分の価値を証明する立場になる。村上宗隆のMLB挑戦には、その厳しさとおもしろさが凝縮されている。

 ホワイトソックスで積み重ねた本塁打は、長打力が国境を越える武器であることを示した。一方、空振りや三振は、日本での成功をそのまま持ち込めるわけではないと教える。

 完成度の高い武器を持ちながら、打者としては変わり続けなければならない。その現在地から、令和の怪物の歩みを読み解きたい。

 村上の異質さは、長距離打者としての実績を積む速度にある。2019年、19歳で36本塁打。21年には39本塁打を放ち、翌22年には打率.318、56本塁打、134打点で三冠王となった。

 シーズン最後の打席でようやく訪れた瞬間を、本人は「ホッとしましたし、長い1本だった」と振り返っている。成長を待たれる年齢で、すでにリーグの頂点へ立っていたのである。

 中でも22年は、本塁打の数だけで評価するには惜しいシーズンだった。出塁率は.458、長打率は.710。遠くへ飛ばす力と、打席を簡単に終わらせない力を両立させていた。相手が勝負を避ければ走者として残り、ストライクを取りにくれば長打で返す。投手にとって、選べる攻め方そのものが狭くなる打者だった。

 この段階で、村上の長打力は将来への期待ではなく、チームが得点計画を立てる際の前提になった。打線の中心に置けば、相手は走者をためた状態で迎えることを警戒する。前を打つ選手の出塁にも、後ろを打つ選手の打席にも、その存在が関わってくる。主砲の価値は、自分の本塁打だけで完結しない。

 しかし、三冠王になったことと、打撃の課題がなくなったことは同義ではない。23年は31本塁打、24年は33本塁打を記録した一方、打率はそれぞれ.256、.244だった。

 日本の投手を相手にしても、22年の水準を毎年再現できたわけではない。その葛藤を凝縮したのが、23年WBCのメキシコとの準決勝だ。最初の3打席で三振し、9回の好機では送りバントも頭をよぎった。城石憲之コーチを通じて栗山英樹監督の信頼を伝えられ、村上は「腹をくくっていけました」と語っている。

 そして放ったのが、逆転サヨナラ二塁打だった。見逃せないのは、本人が最後の打席でも技術的な修正をしていた点だ。初球を振った際、体が前へ流れていると感じ、その動きを直したという。信頼を受けて振る覚悟を決め、同時に自分の体を冷静に観察する。その両立が、あの一打を生んだのだろう。

 村上の長打力は、若くして一流の武器になった。その武器を試合で使い続けるには、毎日の調整がいる。56号までの長い足踏みも、WBCでの三振も、現在の村上につながる経験なのである。

ゴジキ:野球評論家・著作家。「データで読む甲子園の怪物たち」(集英社新書)ほか著書多数。「マネジメント術で読むプロ野球監督論」(光文社新書)が重版出来。発売前から重版となった最新刊「システムで読む甲子園」(カンゼン)が絶賛発売中。Yahoo! ニュースエキスパート。

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