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Posted on 2026年10月03日 10:00

「世代論」で読むプロ野球〈1994年世代・続〉(1)主力を背負うドラ1とドラ9

2026年10月03日 10:00

 1994年度に生を受けた野球人は、破格の当たり年だった。「二刀流」という突出した能力者が同年代にいることで、彼を基準に明と暗のごとく見られがちだが、改めてその他の94年世代の軌跡を振り返れば、異なる道をたどりながら主力としての成熟を果たしていることがわかる——。

 1994年世代を語る時、大谷翔平という存在を避けて通ることはできない。しかし突出した選手を物差しにすると、同学年の選手たちが積み上げてきた仕事も、その過程で抱えた困難も見えにくくなる。

 大山悠輔(阪神)、床田寛樹(広島)、吉川尚輝(巨人)、田中正義(日本ハム)、柳裕也(中日)、西川龍馬(オリックス)、佐野恵太(DeNA)─。彼らの歩みをたどると、この世代の厚みは、異なる場所から主力へと育っていった過程にあるとわかる。

 ここでいう94年世代は、95年の早生まれを含む94年度生まれの同学年を指す。成功をつかんだ年齢も、評価された能力も、乗り越えるべき壁も、決して同じではない。その違いにこそ、プロ野球選手として生きる現実が表れている。

 2016年のドラフトで、大山は阪神から1位、佐野はDeNAから9位で指名された。大学卒の野手同士だが、入団時に与えられた立場には大きな隔たりがあった。大山は白鷗大学から打線の中心を期待され、明治大学の佐野は下位指名から出場機会を広げていった。

 ドラフト1位という肩書は、期待と同時に「成長を待ってもらえる時間」への圧力にもなる。

 その当時、大山自身は栃木県にある白鷗大キャンパス内の一室で、テレビ画面越しにドラフト会議の成り行きを見守っていた。大山自身、「4位までにかかってくれたらうれしいな」という感覚であり、まさか自分が1位で指名されるとは想像もしていなかった。

 各球団の1位指名が始まった直後は完全に気を抜いており、むしろ「指名されなかったらどうしよう」という不安のほうが強かったという。それだけに、「阪神タイガース 大山悠輔」の文字が画面に映し出された瞬間、彼は「ウソだろ?」と目を疑い、「大山悠輔って自分のほかに誰もいないよな?」と頭を混乱させた(週刊ベースボール・26年2月1日)。漫画のワンシーンのように仲間たちと一斉に目が合い、時が止まったような空気感に包まれたという。

 大山の場合、阪神の中心打者として結果を残すことが、そのまま指名の正しさを証明することにつながった。1本の安打を打っても、次には長打を求められる。主力になれば、勝負どころで試合を決めることまで期待される。到達点が次の要求の出発点になる環境だった。

 その中で大山が示したのは、打線を持続させる4番の価値だ。23年は19本塁打、78打点に加え、99四球、出塁率.403を記録して最高出塁率のタイトルを獲得した。長打力と、勝負を避けられた時にボール球を見送る判断を両立させた数字だった。

 4番には走者をかえす責任がある。ただ、その意識が強くなりすぎれば、打ちにくい球を追ってしまい、相手の狙いにはまる。大山の打撃を評価する時は、自分で決める場面と、後続へ託す場面の両方を見る必要がある。四球でつないだ打席にも、相手投手へ与える負担と、次の打者へ残す機会があるからだ。

 一方の佐野は、20年に打率.328で首位打者となり、22年まで3年連続で打率3割を記録した。下位指名から打撃で地位を築いた歩みは、入団時の評価が将来の順位を決めるわけではないことを証明している。22年は22本塁打を放ちながら、574打席で三振は57だった。強く打つことと、バットに当てる確実性を両立させたところに佐野の強みがある。

 四球で機会を残す大山と、打球を生み出して攻撃を進める佐野。同じ主力打者でも、得点への貢献の方法は異なる。もっとも、主力になった後は評価の条件が変わる。佐野の23年の打率は.264、24年は.273。若手なら成長の証しにもなる成績が、首位打者経験者には物足りないと受け止められる。打撃を最大の武器として席をつかんだ選手ほど、その数字の変動が評価に直結する厳しさもある。

 大山は期待を背負って主力になり、佐野は入団時の評価を覆して主力になった。そして2人は、「実績を積んだ自分自身が比較対象になる」という地点で重なる。成功によって葛藤が消えるわけではない。今度は、過去の自分を更新し続ける難しさが待っている。

ゴジキ:野球評論家・著作家。「データで読む甲子園の怪物たち」(集英社新書)ほか著書多数。「マネジメント術で読むプロ野球監督論」(光文社新書)が重版出来。発売前から重版となった最新刊「システムで読む甲子園」(カンゼン)が絶賛発売中。Yahoo! ニュースエキスパート。

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