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記事全文を読む→「世代論」で読むプロ野球〈1994年世代・続〉(3)柳と吉川「数字」が表す意味
柳裕也は、投手の仕事と勝ち星が必ずしも一致しない現実を背負ってきた。21年には11勝6敗、防御率2.20、168奪三振で最優秀防御率と最多奪三振を獲得。23年も防御率2.44を記録したが、勝敗は4勝11敗だった。
象徴的なのが23年8月13日の広島戦である。柳は9回を無安打無失点に抑えたものの、味方も得点できずに降板。中日は延長10回にサヨナラ勝ちしたが、柳に勝利はつかなかった。柳はヒーローインタビューで「みなさんの大声援のおかげで、ノーヒットノーランを達成できました! ありがとうございました!」とコメントを残し、チームメイトから「いやいや‥‥」と言われる冗談をほのめかす場面があった。
最高に近い仕事をしても、個人の勝ち星には結びつかない試合だった。先発投手が直接制御できるのは、自分の投球までである。味方の得点や交代後の展開を思いどおりにはできない。それでも結果欄には自身の勝敗として残る。このずれを無視して「勝てない投手」と評価すれば、チームの課題を個人へ押しつけることになる。
一方、過去の好投によって、その後の課題まで見えなくしてはいけない。柳の投球回は24年に67回、25年は79回3分の1にとどまった。援護と勝敗の問題に加え、先発として年間の仕事量をどう取り戻すかも問われるようになった。選手の評価には、報われなかった仕事を認める視点と、現在必要な改善を見極める視点の両方が要る。
吉川尚輝の場合、その仕事量を左右してきたのは、グラウンドに立ち続けられるかという問題だった。19年は開幕から打率.390と好発進しながら、腰痛による離脱で11試合の出場に終わった。高い能力を見せた直後に、それをチームへ届ける機会を失ったのである。
24年には143試合すべてに出場し、打率.287を記録。二塁手として初のゴールデン・グラブ賞も獲得した。受賞の際には「プロ野球に入ってからずっと目指していた賞なので受賞できて本当にうれしいです。たくさんの人に感謝したいです。また来年、再来年と選んでいただけるように頑張ります」とコメントしており、自慢の守備でタイトルを取りたかったことがわかる。打撃成績の向上に加え、守備で毎試合貢献できたことが、主力としての価値を大きくした。
二塁手の貢献は、安打や本塁打の数だけには収まらない。アウトにできる打球を増やし、併殺を完成させ、投手が次の打者へ向かう条件を整える。そうした働きは、守備機会を重ねてこそシーズン全体の差になる。だから吉川にとって、出場を続けること自体が技術を生かすための重要な条件だった。
しかし、25年の出場は107試合だった。全試合出場を1度達成しても、その状態が翌年に保証されるわけではない。高い運動能力を発揮することと、年間を通して働ける状態を保つこと。その両立は、実績を得た後にも続く課題である。
柳には勝敗だけでは伝わらない好投があり、吉川には打撃成績だけでは伝わらない守備力がある。2人を見ると、数字を読むということは、目立つ数字を拾うこと以上にその数字が何を表し、何を表していないのかを考える行為なのだとわかる。
ゴジキ:野球評論家・著作家。「データで読む甲子園の怪物たち」(集英社新書)ほか著書多数。「マネジメント術で読むプロ野球監督論」(光文社新書)が重版出来。発売前から重版となった最新刊「システムで読む甲子園」(カンゼン)が絶賛発売中。Yahoo! ニュースエキスパート。
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