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Posted on 2026年10月17日 10:01

「世代論」で読むプロ野球〈令和の怪物世代〉(2)「打てない日」に何をすべきか

2026年10月17日 10:01

 26年3月26日、ブルワーズとの開幕戦。ホワイトソックスの「6番・一塁」で先発した村上は、9回にメジャー初本塁打を放った。打球は2階席の看板へ。デビュー戦から、その飛距離を米国の観客に見せつけた。

 試合後の視線は、さらに先を向いていた。本人の口から出たのは「あと161試合ありますし」という言葉だった。目標の舞台に立ち、1本を打った。その喜びを受け止めながら、年間を通して結果を残す仕事を見据えていたのである。

 MLB1年目で30本塁打の大台に到達した村上は、日本で磨いた長打力が海の向こうでも通用することを示した。一方、打率は2割前半にとどまり、三振の多さも課題として浮かび上がった。強く打てることと、安定して安打を重ねられること。その間には、まだ埋めるべき距離がある。

 ただし、多くの四球を選ぶことで出塁の機会もつくっており、打率だけでは打者としての価値を測りきれない。試合を動かす破壊力と、確実性を高める難しさが、村上の打撃には同居している。

 打率だけを見れば、苦戦しているという評価になる。しかし、長打と四球まで含めると、別の輪郭が浮かぶ。安打が出ない打席でも、ボール球を見送り、走者として残ることはできる。そして1本の本塁打で、塁上の走者をまとめて生還させられる。安打の頻度だけでは捉えきれない、得点への貢献がある。

 課題は、その強い打球を生み出す機会を増やすことだ。村上はボール球を見極める力を備えている一方、スイングしたものの球を捉えきれず、空振りする場面が多い。何でも振るから三振が増える、と単純には説明できないのである。振る球を選ぶことと、選んだ球を捉えることは別の能力だ。MLBへの適応では、その両方を高い水準で結びつける必要がある。

 ここから考えられる改善の方向は、強く振れる準備をしながら、狙う球と見送る球を整理し、仕留めるべき球の打ち損じを減らすことだ。三振を減らすためだけにスイングを小さくし、長打まで失えば、村上の打者としての価値も損なわれる。持ち味を保ちながら、打席の中での対応を細かく調整していくことが求められる。

 長打力のある打者に対して、相手投手は当然だが失投を避けようとする。その警戒が四球につながる一方で、打ちやすい球を待つだけでは好機を逃してしまう。限られた好球を捉え損ねれば、不利なカウントで難しい球に対応しなければならない。

 村上に問われているのは、この駆け引きの中で、自分の力を発揮できる1球をどれだけ確実に捉えられるかである。

 また、主砲の仕事には、調子が悪い期間を短くすることも含まれる。好調時に本塁打を重ねても、長く打線が途切れれば、チームは別の得点方法を探さなければならない。打てない日に四球を選ぶことと、次の試合へ向けて打撃を立て直すことは、異なる時間軸でチームを支える仕事だ。村上のさらなる成長は、その両方を安定させるところにある。

 30本塁打への到達は、長打力の有効性を示す成果である。同時に、打率2割前半という数字には、確実性を高める余地が表れている。MLBの主砲としての価値と、安定して働くための課題を合わせて見ることで、村上の挑戦はより立体的に捉えられる。自身の強みが通用するとわかったからこそ、その強みをどれだけ継続して発揮できるかが、次の成長を左右することになるだろう。

ゴジキ:野球評論家・著作家。「データで読む甲子園の怪物たち」(集英社新書)ほか著書多数。「マネジメント術で読むプロ野球監督論」(光文社新書)が重版出来。発売前から重版となった最新刊「システムで読む甲子園」(カンゼン)が絶賛発売中。Yahoo! ニュースエキスパート。

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