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記事全文を読む→手術後のリハビリシーズンに「50-50」を達成した大谷翔平「右肘のヒミツ」
日本のサムライアスリート、3回目の「マイアミの奇跡」だ。ドジャース・大谷翔平が現地時間9月19日のマーリンズ戦で前人未到の「50本塁打50盗塁」を、昨シーズンWBC優勝の地、フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで達成した。しかもドジャースの12年連続ポストシーズン進出がかかったこの試合で、大谷は3本塁打を含む6打席6安打、球団新記録10打点の大活躍で「51本塁打51盗塁」まで伸ばした。ここまで絶好調だと「55-55」も実現させるのではないかと、大いに期待が膨らむ。
おかげで大谷が昨秋の今ごろ右肘の手術を受け、リハビリ期間であることをお忘れの御仁もいるようで、大谷本人やロバーツ監督に「ポストシーズンに大谷は登板するか」と愚問を投げかける記者まで現れた。
現地メディア「FanSided」のリオール・ランパート記者は「オオタニに登板を迫る人物は全員クビになるべきだ」と強い口調で憤っているが、よくぞ言ってくれました、という「正論」である。その理由は、大谷が受けたとみられる「ハイブリッド手術」にある。
かつて肘を故障した投手や野手は自分の腱を移植、固定するフランク・ジョーブ博士考案の「トミー・ジョン手術」を受けていた。これは自身の腱を使うため、選手の筋力によって移植腱が摩耗する耐久性が課題だった。そこをクリアしたのが、足の靭帯負傷の際に使われていたポリエチレン製の人工靱帯「インターナルブレース」を応用した「インターナルブレース術」で、損傷した靭帯を切り取らず、人工靱帯で補強する。
この術式は足に使われていた太くて強靭な人工靭帯を肘に移植するため、自分の筋力で肘靭帯を痛めることなく、パワーヒッターに「肉体改造」できる。このため健康な選手でも打撃成績を向上させために自らの肘にメスを入れる「禁断の手術」でもあるのだが、関節に定着するのに時間がかかり、復帰までに2シーズンを要する難点があった。
そこで大谷の主治医で、ジョーブ博士の後継者であるニール・エラトロッシュ医師が改良を加えたのが、痛めた靭帯の上に自分の腕や足の太い腱を移植するトミー・ジョン手術を施した上に、人工靭帯を被せて強度と耐久性、早期の関節への定着を図る「ハイブリッド手術」。2021年に現デトロイト・タイガースの前田健太が受けたことで、日本でも知られるようになった最新術式である。
大谷は自身の筋力、パワーに耐えられず、右肘の靭帯を2度損傷しているが、そのウィークポイントを補強したのが「ハイブリッド手術」と言える。靭帯を補強したおかげで、今季の大谷は体重を乗せたフルスイングが可能となり、本塁打を量産できた。
その一方で、まだ人工靭帯は完全に定着していないため、現時点での全力投球など不可能。今季いっぱい、さらにはオフシーズンのリハビリは続く。自分の腱と人工靭帯の腱がヒジ関節に完全に定着し、さらに筋力をつけて移植腱から繰り出す投球フォームが完全なものにならない限り、東京ドームでのカブス戦で開幕する来季シーズンの「二刀流」復活は見送られることになるだろう。
「ハイブリッド手術」の特徴を知っていれば、ポストシーズン、ワールドシリーズでの大谷登板なんて馬鹿げた質問はできないのだが…。
大谷の二刀流が復活した時、恩師に倣ってエラトロッシュ医師が、まだ術式名がついていないハイブリッド手術に「ショウヘイ・オオタニ手術」と名づける日が来ることを、日米の野球ファンはゆっくり待とうではないか。
(那須優子)
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