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記事全文を読む→北島康介「29歳の進化」 「急逝ライバルに惨敗」で燃えた天才の意地(4)
1年間で進化した北島の“泳ぎ”
だが、そんなダーレオーエンの急成長が、北島に火をつけたのは確かだ。04年アテネ五輪へ向けた戦い。そして08年北京五輪へ向けた戦いを思い出した。
「200メートルはともかく、100メートルはこれまでの五輪も簡単に勝ったわけじゃないですからね。いつも自分より強い選手がいて、それに勝とうと思ってやってきた。その意味ではまた挑戦できるということに感謝しなくてはいけないと思う」
現時点でダーレオーエンの眼中に自分がいないのだとしたら、五輪までには彼の脳裏の中に自分という存在を植え付けなければいけない。そういう思いで取り組んだのが、スピードを求めて新しく取り組んでいる「泳ぎの完成度」をより高めることだった。最初の50メートルを27秒台で入れるようにして、相手を動揺させなければ勝ち目はないからだ。
その泳ぎを今年の日本選手権ではできた。ダーレオーエンの世界選手権の優勝タイム58秒71に0秒19差まで迫れた。あとは彼のさらなる進化を計算に入れ、もう少しだけ速い27秒台中盤で入れるようにすれば、予選から“どうプレッシャーをかけるか”という戦略を持って戦うこともできる。そこまで考えられる状況にしたのだ。
ただ、新しい泳ぎは100メートル用の泳ぎでもあった。基本的にはスピードを追求したからだ。それがそのまま200メートルまで通用するかというと、まだ不確実だった。体が動いてスピードが出るようになればなるほど、最後の15メートルは苦しくなる。
だが日本選手権5日目の200メートル決勝では、その不安を少し解消する泳ぎを見せた。
昨年の世界選手権のように泳ぎを修正しなかったにもかかわらず、50メートルごとのストローク数は北京五輪の時とほぼ同じの14、15、15、19。150メートルまでは世界記録を上回るペースで泳ぎ、高速水着以外では世界歴代最高の2分08秒00で泳いだのだ。
「泳ぎ自体は100メートルの時のままで行ったけど、今回は200メートルに対する怖さみたいなものはなかったですね。去年の世界選手権の時は前半から行くしかない状況だったから、怖さが先行していたけど、今回はラストで浮くかなと思っても怖くなかった。それに、7秒台前半を狙っていくうえでも、これから強化しなくてはいけないところもだんだん見えてきているから」
北島には自身の持っている2分07秒51の日本記録更新も、視野に入ってきた。
予想以上の惨敗でうちひしがれた、昨年の世界選手権から9カ月。ダーレオーエンを筆頭とするライバルを追いかけることで気力を取り戻した北島は、新たな夢へ向かう強い気持ちを日本選手権で取り戻した。
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