ハンセンとの“駆け引き”
北京五輪の前年となった07年3月の世界選手権は、ライバルのハンセンに自分の存在を強く植え付けなければいけない大会だった。そこで、ハンセンに進化する姿を見せておけば、アテネで敗れている彼にとっては大きなプレッシャーになるからだ。
年末から年始にかけての合宿ではこれまでにないほど泳ぎ込んだ北島は、自分の仕上がりに期待感を持って大会に臨んだ。そして最初の100メートル予選では、59秒96でトップ通過と勢いを見せたのだ。
翌日の決勝も北島は攻めた。前半が速いハンセンにプレッシャーをかけようと、最初の50メートルを自身初の27秒台。それも自分が持つ50メートルの日本記録より0秒01遅いだけの27秒79で入ったのだ。
ハンセンとの差は0秒12 。その差は後半も変わらなかった。そこから伸びるはずの相手も、北島の速い入りに驚いて泳ぎを崩したからだ。北島も後半は疲れが見え、59秒96 にとどまったが、優勝したハンセンとの差は0秒16。接戦に持ち込んだ。
「ハンセンもやっぱり人間ですね。持ちタイムは圧倒的に違っていても、プレッシャーがかかる場では僕のことを意識するし、勝負を意識する。この競い合いは絶対に次へつながるし、僕もここから彼にプレッシャーをかけ続けていける」
次の200メートルでも前年のパンパシでつけられた差がどこまで縮まっているか確かめられる、と楽しみにしていたからだ。
だがその希望はあっけなく消滅した。ハンセンは体調を崩したという理由で、200メートルを棄権したからだ。逃げたのか・・・? 対決は北京までお預けとなった。
ライバルがいないレースで北島は、余裕を持って優勝した。だが記録は2分09秒80と平凡だった。
「やっぱりハンセンがいないとダメですね。彼と競り合う感覚を味わうためにここへ来たのに」
そう言って苦笑した北島は、こう言葉を続けた。
「もちろん今の時点ではハンセンのほうが一枚も二枚も上です。でも、だからこそ『死に物狂いで頑張ってやる』『負けてもいいからもう一回チャレンジする』という気持ちになれたんです」
ライバルに追いつき、倒したい。その思いが彼の北京への気持ちを燃え上がらせたのだ。
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