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文太にすれば、任侠映画でもギャング映画でもない、キンキンとコンビを組んだトラック運転手の2人組道中記、アクションあり、涙あり、笑いありの人情喜劇で、ちょっと下品でスケベ、おっちょこちょいだが、義理人情に弱い熱血漢という、およそ今まで演じたことのない限りなく三枚目に近い役どころとなる異色作品であった。
はたしてその企画が吉と出るか、文太にとっても東映にとっても冒険であったろうが、文太のズッコケキャラは大成功、思いもかけない大ヒットにつながり、熱狂的な星桃次郎ファンを生んだのだった。
文太もこの一番星の役をかなり楽しみ、大いに乗って演じたようで前述のインタビューで、
「『仁義なき戦い』の広能昌三と180度違うキャラに戸惑いはなかったのか?」
の問いに、
「ああ、別に。映画っていうのは、そういうところがおもしろいんで。本物の極道をやるわけじゃないから。すべてフィクション。何でもできる。むしろ映画なんてのは、(日常の)スレスレギリギリのところをちょっと破ってスピードアップしたりね‥‥そういうことを絶対できないお客さんにしてみれば、ハラハラしながら必ず目的を達成するおもしろさに一時の発散をするんじゃないのかな」
と答えている。
メガホンをとった鈴木則文監督も、文太は星桃次郎役を、「実に生々と人間くさく涙と笑いで熱演怪演した」として、
「俳優菅原文太のフトコロの深さは長年付き合っていたわたしでも、いつも新しく発見されるものがあった。
人間の劣情のなかに浮かび上がるピュアな魂の光芒。報いられようと報いられまいと、無償の情熱をもって突っ走る男の真情を演じて、菅原文太の右に出る役者は日本にはいない」(鈴木則文「新トラック野郎風雲録」ちくま文庫)
と絶賛している。
この鈴木則文と文太とはともに昭和8年(1933年)生まれの同期、自宅も近くで仲が良かった。2人が初めて監督と主役として組んだのは「関東テキヤ一家」シリーズ(5本中4作が鈴木監督)で、よほどウマが合ったのか、「下品こそこの世の花」との名言をのこした鈴木則文と文太とは「トラック野郎」でもあうんの呼吸を見せた。
鈴木と共同脚本の澤井信一郎で造型した主人公の星桃次郎は、文太にとっても、ことのほか気に入りの特別のキャラとなったようだ。
「“一番星桃次郎”っていうのは、きっと一生オレの相棒だという愛情はあるよ。今、農業やっているだろう? 作った野菜に『一番星』っていう名前をつけているし。なかなか売れないけどな(笑)。まあ、ひとつの愛嬌で、喜んでくれるお客さんもいるから、そういう形で今でもやっているとも言えるし」
とは、文太の弁であった。
この桃次郎の「トラック野郎」は正月と盆に公開され、渥美清の「男はつらいよ」寅さんと並ぶ風物詩的なシリーズとなり、国民的映画となった。毎回マドンナが登場し、桃次郎が惚れて失恋する趣向も寅さんと同じだった。前述の一昨年11月のインタビューで、印象に残っているマドンナとして文太が挙げたのは、夭折した女優夏目雅子(6作目の登場)であった。
◆作家・山平重樹
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