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映画史家・伊藤彰彦氏「『仁義なき戦い』は抑圧される者の言葉がサラリーマンに響いた」

 映画「仁義なき戦い」、そしてそのセリフはなぜ人々の心をこうも打つのか。何よりも際立つのはその生々しさだと、映画史家の伊藤彰彦氏は言う。

「1973年、笠原和夫が美能幸三氏原作の、まだ湯気も立っているような広島の複雑な抗争を脚本するにあたって、みずからの足を使い、現役の(ヤクザの)人、引退した人、あるいは被害者、ヤクザが来店する店のおばちゃんにまで取材し、生きた広島弁を捉えた。それにひと味加えて躍動感あるセリフにしたのです。広島弁のえげつなさ、人情味ある面白さは、後に広島弁のシェイクスピアとまで言われました」

 もちろん、演者たちもそれに応えた。

「1人のヒーローというのはいない、人間の生々しい行動原理で生きる人物を、菅原文太、梅宮辰夫、東映に殴り込みをかけてきた小林旭、それに成田三樹夫たちが、噛みつくような、食うか食われるかのような演技で魅せたのです。また、モデルとなったヤクザたち、抑圧された町、そういった押さえつけられた、踏みつけられた者の言葉も大きいのでしょう。第1作で広能が坂井に言う、『狙われるもんより、狙うほうが強いんじゃ』というセリフや、完結編で宍戸錠演じる大友の『牛の糞にも段々があるんで~』などがそう。これらの言葉はヤクザでなくとも、抑圧され踏みつけられている側の人間、つまりは公開当時のサラリーマンの心にもドンと響いたのです。第4作で梅宮辰夫演じる岩井の『おどれも吐いた唾飲まんとけよ』などは、さすがにサラリーマンの社会では言いたいけど言えない言葉ですよね」

 伊藤氏によれば、笠原和夫と美能幸三は呉で同じ海軍出身の先輩後輩だったともいう。この意外なつながりも功を奏したのだ。

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