名越 今後、日本は激変したアメリカとうまくやっていけますか。
藤原 安倍政権と石破政権を比較すると、石破政権のほうがトランプとしっかり対応していると思います。
名越 それは意外です。
藤原 彼の世界には、敵か部下の2つしかありません。安倍元総理は部下として振るまい、個人的信頼は得ましたが、日本に有利な譲歩を得たわけではない。石破総理を持ち上げるわけではありませんが、歯の浮くお世辞を並べながらも政策では譲っていない点で評価できます。
名越 とはいえ、日米関係では厳しい状況が続きますね。そうなると、今後、日中、日韓外交がますます重要になってきます。
藤原 中国は日本に秋波を送っているのは事実です。そこを日本は利用すべきです。石破総理は第55代内閣総理大臣の石橋湛山さんに学んだ人。石橋さんは、経済関係を密にすることは、軍事的衝突の防波堤になるという考えでした。中国と経済分野で結びつきを強めることは、日本にメリットがあると思います。
名越 石破総理は「大阪・関西万博」中に、日本で日中韓首脳会談を実現させたいようです。
藤原 確かに大事なのは習近平国家主席との会談です。ですが、習近平国家主席を引っ張り出すのは容易ではありません。それに国賓扱いで日本に招くのは、政党によらず反発が強い。
名越 参院選で自民党が負ければ、総理が代わっている可能性もありますね。
藤原 そうしたことも含めて、参院選の意味は非常に大きいと言えます。
名越 今後も地政学や経済面など、世界各地で炎上が繰り返されそうですね。
藤原 残念ながら、ますます世界は不安定になりそうです。
ゲスト:藤原帰一(ふじわら・きいち)1956年生まれ。順天堂大学国際教養学研究科特任教授・東京大学名誉教授・同大学未来ビジョン研究センター客員教授。専門は国際政治・比較政治・東南アジア政治。東京大学法学部卒業。同大学大学院博士課程単位取得中退。東京大学教授、ジョンズ・ホプキンス大学国際高等研究院客員教授、東京大学未来ビジョン研究センター長などを歴任。「平和のリアリズム」で第26回石橋湛山賞受賞。
聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「独裁者プーチン」(文春新書)など。