一度もJ2に降格したことがない横浜F・マリノスはここにきて2連勝し、最下位脱出が見えてきた。
第18節(5月25日)は、ホームに首位・鹿島アントラーズを迎えた。戦前の予想では鹿島が断然優位。ところが「番狂わせ」が起きる。
7連敗で11試合勝ちなしの最下位マリノスが、7連勝の鹿島を3-1で破ってしまうのだ。さらに翌19節、町田ゼルビアと敵地で対戦すると3-0で下して連勝したのである。
ただ、これで「マリノスが復活した」とは言い切れない。なぜなら、鹿島戦は鹿島のデキが悪かった。心のどこかで相手をナメていたのかもしれないし、今のマリノスに負けるわけがないというおごりがあったのかもしれない。攻守において軽いプレーが多く、気が付いた時には0-3になっていた。
逆にマリノスは、何がなんでも勝ち点を取りにいくという必死さがあった。鹿島のエース・鈴木優磨は「勝ちたいという気持ちの差」と負けを認めていた。
町田戦も点差だけ見れば快勝だが、マリノスが打ったシュートは、わずかに4本。開始6分にコーナーキックからの失点がVARで取り消されたが、微妙な判定だった。このゴールが認められて町田が先制していれば、結果は違っていたかもしれない。
前半に2点リードし、後半は押し込まれる時間が多かった。特に終盤は防戦一方。2点差があるのに、まるで1点差を必死で守るような守備は、勝っていないチームのプレッシャーゆえだろう。とにかく前線のスペースにボールを蹴って、時間を稼ごうとしていた。
これで19位アルビレックス新潟との勝ち点差を、2に縮めることができた。しかも今週からは代表ウィークのため、リーグが中断。パトリック・キスノーボ新監督にとって、初めて腰を据えてトレーニングができる。ここでチームをどう立て直せるか。マリノスの命運がかかっているといっても過言ではない。
というのも、リーグ中断明けの対戦相手に注目してほしい。まず6月15日に新潟、21日にファジアーノ岡山、25日にFC東京、28日に湘南ベルマーレ、7月5日に横浜FCと、下位チームとの試合が続くのだ。
まず15日の新潟に勝てば、最下位を脱出できる。その他の対戦でもマリノスが勝つことによって、残留争いへと引きずり下ろすことができるし、他の試合結果によっては、マリノスがさらに順位を上げることができる。
まさにマリノスにとっては、降格か残留かを左右する大きなヤマ場といっていい。ここを乗り切れれば、横浜FC戦後にE-1東アジア選手権のため、再びリーグが中断する。その頃には故障で戦列を離脱している守りの要ジェイソン・キニョーネスや、諏訪間幸成の復帰のメドが立っているはず。彼らが戦列に戻れば、守備は安定する。だからこそ、この2週間のトレーニングと、リーグが再開してからの5試合が大事になってくる。
Jリーグは首位争いよりも、マリノスが絡んでいる残留争いの方が断然、面白いのだ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。