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森高千里「私がオバサンになっても」(前編)(1)九州育ちが「どさん娘」デビュー

 元祖ビジュアル系ガールズロック歌手といえば森高千里で譲れない!  今年5月のデビュー25周年を機に音楽活動を再開した森高だが、オトコ心をわしづかみにしたあの脚線美とハイトーンボイスは今でも脳裏に焼き付いたままだ。懐かしくも色あせることのない追憶の「ザ・森高アナザーランド」に2週連続でフラッシュバックする!

九州育ちが「どさん娘」デビュー

 87年1月、デビュー直後の森高千里は厳寒の北海道にいた。そこには一世を風靡した「17才」でのミニスカートからスラリと伸びた美脚も、独特の鼻に抜ける“森高エコー”の歌声もなかった。まだ17歳の女子高生だった森高は新人女優だったのだ。

 大阪生まれ、熊本育ちの森高に大きな転機が訪れたのは高校2年の夏休みのことだった。当時、九州女学院高校に通っていた友人と一緒に応募したのが、大塚製薬の「第1回ポカリスエット・イメージガールコンテスト」だった。ところが、あれよという間に九州大会を勝ち上がった森高は、ついには応募総数1万2000人の中から最終選考の35人に選ばれる。そして、東京での最終選考審査でみごとグランプリを勝ち取るという、一夜にして文字どおりのシンデレラガールになるのだ。

 本人がのちに「帰りはディズニーランドに行ってこようね、なんて母と喜んでいたら、いきなり優勝してしまって」と語っているとおり、ひと夏の思い出は思いがけず一生を大きく左右する一大事件へと変わったのだ。

 オーディションに合格した森高には審査員を務めた糸井重里とCM共演、さらには、歌手、映画出演というスターに羽ばたくためのまたとない好機が用意されていたのだ。その最初の大仕事が映画「あいつに恋して」(東宝)のヒロイン役だった。しかしその現場はあまりにも過酷だった。

 映画の主演を務めた風見しんごは、昨日のことのように述懐する。

「自分の中では一般的に言われる“ミニスカ森高”じゃない、毛糸の帽子をかぶった森高さんのイメージが強いんです。最初に彼女に会ったのは、映画の舞台となった北海道の牧場でした。まだ熊本弁が抜けない彼女は監督から『もっと大きい声を出して』ときつく叱られていましたね。映画は、僕自身も心が折れそうなくらい過酷な撮影だったのですが、彼女はふんばってお芝居をしていました」

 作品は、北海道から道産子に乗った風見が鹿児島まで旅するという青春ロードムービー。南国育ちで演技経験のない森高がデビュー早々、いきなり「どさん娘」役を演じる“試練”だっただけに苦労がしのばれる。

「彼女は牧場主の娘役なので、馬を乗りこなさなきゃいけなかった。当時はまだ高校生で馬に乗るのも初めてで、最初のうちはホントに馬から何度も雪の中に落ちていました。それでも負けずに厳しい寒さの中で乗馬の練習を繰り返していたのを覚えています。ですから芯の強い女の子という印象でした」

 その猛シゴキの成果だろうか、映画では白馬にまたがった森高が疾走する場面が何度も登場するのだ。白銀の景色の中でさっそうと馬を疾駆させる美少女の姿は、映画の中で一服の清涼剤のようなすがすがしさを漂わせるのだ。

 そんな、過酷なロケの合間のオフショットも風見は鮮明に記憶していた。それもそのはず、森高はロケバスの中で、ドラムスティックを握り、電話帳のような分厚い本を数冊重ね、それをスネアドラムに見立て、

「タタタ、タタタ」

 と心地よさそうにリズムを刻んでいたのだという。それが、のちの“異端アイドル”の誕生前史になる予感を、すでに風見は感じ取っていたという。

「もちろん演技をしている時も一生懸命でしたが、そのドラムを叩く時は一生懸命な中にも喜びがあるような。お芝居とか乗馬とか未経験なことに一生懸命トライしていたが、本当は音楽が好きな子なんだな。ひょっとしたら、将来的には音楽をやる人なんではと感じましたね」

 九州女学院の仲間と組んだバンドではドラムスを担当していた森高だが、映画の撮影中にもかかわらず、一心不乱にドラム練習に明け暮れる姿こそ、異国のような北の大地での厳しい撮影から一時でも逃れる寄る辺のようなものだったのかもしれない。

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