社会
Posted on 2018年05月14日 05:55

秋津壽男“どっち?”の健康学「五月病とうつ病の違いはあるのか?セロトニンの分泌がストレスを抑える」

2018年05月14日 05:55

 5月になると話題になるのが「五月病」です。新年度を迎えて進学や転勤、転職をした人が新たな環境に適応できないままゴールデンウイークを経て体調の異変を訴えるのが五月病の症状ですが、ここで質問です。五月病とうつ病では症状は同じでしょうか。それとも違う症状でしょうか?

 もともと、五月病は医学的な病名ではありません。定義するなら「五月前後によく見られる、環境変化によるストレス性反応」と言えます。医学的には「うつ病」というよりも「うつ病の一歩手前」の状態を指します。「適応障害」という診断が正しいのです。五月病の症状としては、食欲不振、めまい、動悸、睡眠障害などがあげられる他、気分が上がらず、憂うつになったり、イライラしたりすることも多くなります。これが悪化すると、「うつ病」になってしまうのです。

 かつて、五月病は大学生に多く見られる症状でした。憧れの大学に進学し、新入生として先輩からチヤホヤされ、新たな環境を迎えてルンルン気分でいたものが五月になってチヤホヤがなくなり、気分が落ち込むからです。

 しかし、最近の五月病は社会人にも多く見られます。4月に新年度が始まると仕事を頑張りすぎて、5月になって息切れを起こす場合や、転職や転属先で結果を出せなかったり、新たな人間関係を築けずに落ち込んだりすれば、中高年でもかかる病です。

 前年度の職場での営業成績がよく、あれもこれもできるはずだと信じていた人が、新たな環境で実際に働いてみると「何の役にも立っていない」と気づくのが今の時期です。それでも必死で働いているうちにいつしか環境になじみ自然と治るのも五月病の特徴です。

 ですが、その一方で五月病で会社を辞める人も増えています。理想と現実の違いに戸惑ってしまうことが要因とも言えます。特に「理想が高い人」「内向的な人」「完璧主義者」「我慢強い人」などです。「俺が会社を変えてやる」と意気込んでいたのに、いざ働いてみると企画書一枚まともに書けない。こうした人がうつ状態になるのです。

 5月を迎えて気分が落ち込んだ場合、必要なのは気分転換です。ここでアルコールに依存するのだけは避けるべきでしょう。他にもジョギングや水泳など有酸素運動で汗を流すのもおすすめです。気分転換になるだけではなく、運動により神経伝達物質のセロトニンの働きが脳内で活発になるので、ストレスやイライラを抑え、気分転換となります。

 食事にも気をつけたいものです。セロトニンは肉、納豆、乳製品にも多く含まれます。他にも、ビタミンCは「抗ストレスビタミン」とも呼ばれ、キャベツ、トマト、グレープフルーツに多く含まれているので、積極的に食べるようにするといいでしょう。

 加えて、日光を浴びることによってセロトニンは活発に分泌され、眠気を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑えます。しかも、16時間後の寝る頃にメラトニンが分泌されるようになることで、しっかりと夜に睡眠をとれるようになるのです。こうした習慣を日常生活に取り込めば、睡眠不足も解消できるでしょう。

 5月病で大事なのは「己を知ること」です。自分のできることを知り、できないことは「しかたがない」と割り切るのが肝心です。100点満点の仕事など、多くの人はできません。自分一人でできる仕事には限界があります。上手に人間関係を築くのが重要なのです。

 人生は、ある意味でいいかげんさも必要です。「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ~」と演じた植木等さんのような世渡り上手を目指してください。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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