社会
Posted on 2014年04月17日 09:56

伊集院静「日本をダメにした団塊の世代に告ぐ」(2)民主主義は少数意見を大事にしなきゃいけない

2014年04月17日 09:56

20140417i

──インターネットによって情報の量は飛躍的に増えました。情報や知識が増えて、異なる文化や異なる価値観に触れると人はどんどん寛容になるかと思ったら、事態は逆です。どんどん排外主義になってきていますね。ヘイトスピーチなどはその典型でしょう。

伊集院 ヘイトスピーチでも雑誌の嫌中嫌韓記事でもそうだけど、一度「出ていけ、朝鮮人!」と言うと、気持ちいいんだよ。妙な民族意識が芽生えている。だからその次は「殺してしまえ、朝鮮人!」とエスカレートして、もっと気持ちよくなる。そういうものをみんなが持つようになっている。言葉は恐ろしいものだ。子供たちに「汚い言葉を使うな」という理由はそこなんだよ。「バカ野郎」を覚えたら、その次は「クソバカ野郎」を覚える。人間にはそういう本性がある。

──先ほど、人間には、許せない自分を許せないという気持ちがあるとおっしゃいました。不寛容である自分が嫌だという自分がある。だったら「朝鮮人は出ていけ」という自分は醜いという気持ちもあるのでは。

伊集院 そう。じゃあなぜそう言わないのか。隣に他人がいるからですよ。フェイスブックとかはそういうものの強い力なんだ。1人では言えないのに、2人、3人、5人と集まったら、それが力だと誤解する。もっと大きなことで言うと、それが民意だと思い込む。

──「みんなが言っている」と。

伊集院 そう。そこがおそろしいことだ。つながっているという幻の怖さなんだよ。

──LINEやフェイスブックやツイッターでつながっていると思い込んでいるだけなのに。

伊集院 現実にはつながってやしないのに。でも戦前はもっと顕著だったでしょう? 国民は「これだけ世界各国からいじめられているんだから、もう国際連盟から脱退しよう」と言う。国際連盟を脱退した松岡洋右は、帰国したとき英雄として迎えられた。そのとき、「こんなに厳しい状況では戦わないわけにはいかない。だって日本は負けたことがないんだから」と軍人たちが、うまいものを食いながら言った。「神国ニッポン、われわれが負けるものか」ってね。だけど戦争へ一気に突入できたのは、国民の8割方が支持したからだよ。よく「軍人と政治家が戦争した」というけど、それは違う。最後に支持したのは日本人自身だった。

──一般民衆が戦争したんですね。

伊集院 じゃあ、一般民衆というのは国民全員ですか? 違う。一般民衆というのは「大半」のことなんだ。戦争に反対して牢獄に入れられた人もいるけれども、それよりも大事なのは、支持したのは5割、6割であっても、全員が支持したことになるということ。それは民主主義の基本でもある。もっと狡智な政治家は「賛成は4割でいい」って言うんだ。残りの6割のうち、1割が反対で、5割はどっちにでもつく。どっちにでもつく人間の半分プラスアルファを足したら約7割だろう? それはもう全体だ、という話になる。

──4割が全員になってしまう。多数決のマジックですね。

伊集院 だから民主主義というのは少数意見を大事にしなきゃいけないんだけど、そんなことは今、学校でも教えない。今、政治家たちが言うのは数字の上で勝ったか負けたかだけだから。じゃあ、何が悪いかというと、きちんとした意見を述べられる大人がいないからだよね。

◆プロフィール 伊集院静(いじゅういん・しずか) 50年山口県生まれ。72年立教大学卒。81年短編小説「皐月」でデビュー。92年「受け月」で直木賞、94年「機関車先生」で柴田錬三郎賞、02年「ごろごろ」で吉川英治文学賞を受賞。「いねむり先生」「ノボさん」など著書多数。

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2026年01月14日 07:30

    昨年あたりから平成レトロブームを追い風に、空前の「シール」ブームが続いている。かつては子供向け文具の定番だったシールだが、今や「大人が本気で集めるコレクターズアイテム」として存在感を放つ。1980年代から90年代を思わせる配色やモチーフ、ぷ...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    社会
    2026年01月19日 07:30

    鉄道などの公共交通機関で通勤する人が、乗車の際に使っている定期券。きっぷを毎回買うよりは当然ながらお得になっているのだが、合法的にもっと安く購入する方法があるのをご存じだろうか。それが「分割定期券」だ。これはA駅からC駅の通勤区間の定期券を...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    社会
    2026年01月22日 07:30

    今年も確定申告の季節がやってきた。「面倒だけど、去年と同じやり方で済ませればいい」と考える人は少なくないだろう。しかし、令和7年分(2025年分)の確定申告は、従来の感覚では対応しきれないものになっている。昨年からの税制の見直しにより、内容...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    注目キーワード

    人気記事

    1. 1
    2. 2
    3. 3
    4. 4
    5. 5
    6. 6
    7. 7
    8. 8
    9. 9
    10. 10
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/2/24発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク