芸能

蘇る!山口百恵「赤いシリーズ」の“衝撃”(6)新人だった国広富之が受けた“大映ドラマの洗礼”

20140522l

 秋野暢子と同じく、デビュー間もない国広富之も“大映ドラマの洗礼”を受けている。

「視聴者はゴハンを食べながら観ているんだから、セリフは大きな声ではっきり、しっかり、あえぎながら。それでも足りなかったら目薬でも入れなさい」

 プロデューサーからの過剰な注文である。国広は山田太一原作の傑作ドラマ「岸辺のアルバム」(77年)で注目され、その直後に百恵の相手役として「赤い絆」(77年)に抜擢される。

「デビュー作はVTRだったから、フィルムはこれが初めて。VTRはマルチで撮るけど、フィルムは片方だけ撮って次という感じだったのでとまどいました」

 さらに人気絶頂の百恵のスケジュールである。いったん撮影を中断し、ヒット曲を持って「夜のヒットスタジオ」などの歌番組に出演。それを終えて深夜から撮影が再開となる。それが週に2回や3回はザラだったと国広は振り返る。

「そんな忙しさでも百恵ちゃんは笑顔を絶やさない。それでいてキャメラが回り出すと、とたんに愁いを帯びた表情ができる。セリフだって、いつ覚えられるんだろうと感心するくらい完璧でした」

 まだ新人だった国広にとって、黄金コンビだった三浦友和に代わっての恋人役である。そのプレッシャーは、しかし感じるヒマもないくらい撮影に没頭したという。

 好評を得た国広は、続く「赤い激突」でも重要な役でシリーズに連続登板を果たす。

「海外ロケが決まると、その直前までは撮影スケジュールが立て込んできます。最長で50時間以上もの連続ロケがあり、照明スタッフがライトを当てたまま下に落っこちたり、監督が眠っちゃって『カット!』の声がいつまでもかからないなんてこともありました」

 座長格の宇津井には、先日のお別れの会で水谷豊が弔辞を読んだのと同じように、俳優として多くのことを学んだ。控え室でも常にバーベルを上げ下げしていたり、乗馬クラブで見せられた「日本一の投げ縄の技術」などは、自身が時代劇に出演した際に役立った。

 そして国広は、同じ大映ドラマでもイメージをガラリと変えた「噂の刑事トミーとマツ」(79年)で、さらに支持を拡大させた。

「赤いシリーズでも台本をもらうことが楽しみでした。複雑なストーリーで目が離せなかったけど、そこに政治や社会的なテーマを織り込んであって、むさぼるように読んでいました」

 山口百恵や宇津井健を中心とした「赤いシリーズ」の炎は、今なおアジア各国に飛び火し、燃えさかっているのである。

〈文中敬称略、了〉

カテゴリー: 芸能   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<マイクロスリ―プ>意識はあっても脳は強制終了の状態!?

    338173

    昼間に居眠りをしてしまう─。もしかしたら「マイクロスリープ」かもしれない。これは日中、覚醒している時に数秒間眠ってしまう現象だ。瞬間的な睡眠のため、自身に眠ったという感覚はないが、その瞬間の脳波は覚醒時とは異なり、睡眠に入っている状態である…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<紫外線対策>目の角膜にダメージ 白内障の危険も!?

    337752

    日差しにも初夏の気配を感じるこれからの季節は「紫外線」に注意が必要だ。紫外線は4月から強まり、7月にピークを迎える。野外イベントなど外出する機会も増える時期でもあるので、万全の対策を心がけたい。中年以上の男性は「日焼けした肌こそ男らしさの象…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<四十肩・五十肩>吊り革をつかむ時に肩が上がらない‥‥

    337241

    最近、肩が上がらない─。もしかしたら「四十肩・五十肩」かもしれない。これは肩の関節痛である肩関節周囲炎で、肩を高く上げたり水平に保つことが困難になる。40代で発症すれば「四十肩」、50代で発症すれば「五十肩」と年齢によって呼び名が変わるだけ…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
【戦慄秘話】「山一抗争」をめぐる記事で梅宮辰夫が激怒説教「こんなの、殺されちゃうよ!」
2
神宮球場「価格変動制チケット」が試合中に500円で叩き売り!1万2000円で事前購入した人の心中は…
3
永野芽郁の二股不倫スキャンダルが「キャスター」に及ぼす「大幅書き換え」の緊急対策
4
巨人で埋もれる「3軍落ち」浅野翔吾と阿部監督と合わない秋広優人の先行き
5
「島田紳助の登場」が確定的に!7月開始「ダウンタウンチャンネル」の中身