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記事全文を読む→【不可解現象】細田守監督「果てしなきスカーレット」の評価が上がらない深~い考察/大高宏雄の「映画一直線」
本格的な正月興行を前に、興行面でいくつかの現象が起こっている。ひとつが、細田守監督の新作「果てしなきスカーレット」の興収が伸びていないことだ。
最終では10億円に届くかどうか。この数値のめどは作品によっては成功の場合もあるが、高額な製作費などから、本作としては不本意である。
細田監督はアニメのヒットメーカーである。長年のヒット作から、監督自身にファンがついている。中心的なファン以外の客層も幅広く、厚い。新作には製作会社が潤沢な資金を用意する。
しだいにひとつの流れができてきた。ヒットメーカーとしての「役割」が、細田監督に一段と強く求められてきたことだ。
期待値と興行の足かせは、いかばかりだろうか。想像を絶する。これは細田監督に限らない。宮崎駿監督も、同じ道筋をたどったことだろう。
期待値と興行の足かせをあっさりと取っ払い、全く別の道を行くのではない。そこを踏まえつつ、どのように自身の表現の幅を広げていくか。「果てしなきスカーレット」は、その新たな挑戦の作品に見えた。
とはいえ、作品の評価はそれほど上がっていない。それが興行にも反映されているとみるのが妥当ではあるが、興行は興行である。それほど単純な見方ができる作品ではない。
細部には踏み込まないが、本作の真骨頂は、生と死の間にもうひとつの世界を設定したことだろう。死んでいるのに、死んでいない世界。そこで主人公(デンマークの王女)の復讐の劇が始まる。
この宙ぶらりんの異世界を、今の時代だからこそ、設定する必要性があったのだと思う。生と死の2分割ではない。生と死の分水嶺、一種の緩衝地帯への強烈な志向、意識の中に、細田監督の現在位置があるように感じた。
現在位置とは、混迷の度合いを増す今の世界と日本の社会情勢の上に立ったものと考えられる。それを自問自答した時、先の場所に自身の強い思いを設定せざるをえなかったのではないか。
「赦す」というキーワードが出てくる。全てを奪われた者が、奪った者を「赦す」。リアルな現実の場(映画の中の)において放たれたこの言葉が(映画の中の)緩衝地帯における王女の復讐劇のさなかで認識される。
そこでは「赦す」行為が、幾分かは相対化されるとみていい。ゆえに「赦す」はある意味、留保的になる。実態は変わらないのだが、「赦す」を宙吊りにはできる。
「赦す」には宗教的な側面も大いにかかわるが、世界の生々しい現状を見れば、この言葉の全的な容認は簡単にはできない。かといって、戦争や社会の分断などを根拠づける復讐の連鎖を断ち切る、つまり「赦す」を容認しないことには、世界は破滅の道を行く。
「赦す」を頭で考えることと、実際の行動は違う。この離反こそ、緩衝地帯の根源にあるものではないか。一筋縄ではいかない「赦す」への共感、反感を緩衝地帯へと一旦、飲み込ませてみる。
理詰めで頭か行動か、共感か反感かといった二者択一の極論に到達するのではない。現実を見る前に曖昧さを担保し、なおかつ、「赦す」境地へと赴く。赴かなくてはならない。
本作は「赦す」をめぐり、複雑な回路をたどった「仮構」の劇である。もちろん、ここまでしても「赦す」には、わだかまりが残る。すっきりしない。
思えば、監督の「サマーウォーズ」も、現実と仮想空間を対比的に描きながら、別の次元へ踏み込むかのような作品だった。現実、仮想空間の境界が、明確ということはなかった。
「果てしなきスカーレット」と「サマーウォーズ」は、次元を異にする空間性の中で、両者の確執を描きながら、境界は超えられないという作品世界を構築していたのではないか。
冒頭に一応、戻る。細田監督のブレイク作品である「サマーウォーズ」にあって「果てしなきスカーレット」にないもの。それは作品に内在するビジュアルのエネルギーだと思う。
「サマーウォーズ」には境界の様を描いていく中で、ビジュアルの斬新極まる圧倒的な強度、言葉を変えれば「大衆性」があった。心に強く訴えかけるものがあった。
これを大成功した興行と結びつけていいだろう。ただ近年、観客の意識は一段と研ぎ澄まされ、別の言い方では、作品の差異化を認めなくなりつつある。
その一端が今回、白日のもとに晒されたのではないか。とはいえ、監督は作品の差異性の中で映画と相対していく。そこを踏まえると、製作側にとって、なかなかに厳しい時代だと言わざるをえない。
(大高宏雄)
映画ジャーナリスト。毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。「アメリカ映画に明日はあるか」(ハモニカブックス)、「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2025年に34回目を迎えた。
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