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Posted on 2025年10月11日 19:00

「町中華ブーム」に殴り込みをかけた「料理経験ゼロの中華料理店主」俳優・田丸大輔52歳の冷蔵庫・鍋・包丁・丼・椅子「1万回訓練」

2025年10月11日 19:00

 第25回TAMA NEW WAVEで「ベスト男優賞」受賞。一種独特の雰囲気を醸し出しながらも、どこか親しみを感じさせる人物像を軽やかでユーモラスに演じ、一躍注目を浴びる。俳優生活20年以上、50歳を超え、人生を新しく始められる節目にさしかかった田丸大輔・52歳が、新たなステージに挑戦している。

 町中華ブームの最中、中華料理屋の店主を演じる映画「ライフ・イズ・ビューティフル・オッケー」(配給:ひと夏の冒険出版)が10月4日から公開中の田丸が、直撃インタビューに応じた。遅咲きの名バイプレーヤーの言葉は、笑いあり含蓄ありのもので…。

――町中華の店主を演じ、国内の2つの映画祭で主演男優を受賞していますね。

 過去にも俳優賞はいくつか頂いてるんですが、ただ今回は長編で主演の俳優賞。初めてだったので、特に嬉しかったです。しかも2つですから。ひとつめの時は餃子好きの自分はご褒美としてひとりで餃子屋に行き、11皿を完食しました。しばらく体が臭くなり(笑)、周りには迷惑をかけましたが。2つめの時は反省して、飲みだけにしました。日本酒が好きなので、日本酒の店で限界まで飲んでやろうと思い、朝起きたら公園の滑り台で寝てました。記憶がありません。

――俳優を目指すきっかけは何でしたか。

 芝居を始めたのは30歳になる前です。そこから20年ちょい、経ちますね。それまでサラリーマンをしていて、結婚して子供育ててって考えていたので、それを捨てて脱サラして親にも内緒でやったわけですから。脱サラして役者を始めた時に、覚悟はありました。人生これでいくと、最初に決めた。だから続けている理由はなくて、これが自分にとって普通のことです。苦労はないです。普通のことですから。それまで演技をしたことがなかったのですが、もともと映画が好きで、映画中心で仕事ができたらと思ってまして、でも何から始めていいか分からない。なのでまずは演技の勉強するなら舞台からだと思って、劇団に入りました。

――どんな劇団生活を?

 演技は「劇団天然工房」で教わりました。最初は歩く演技も出できなかったし、振り向くこともできなかったです。何もできなかった。大変でした。周りも大変だったと思います。今の私がいるのは、劇団のリーディングアクター・松田信行のおかけです。今の自分の全ての演技の土台は、ここで作られました。私の原点は劇団天然工房です。この劇団で12年ほどやって、活動を舞台から映像中心に移しました。もともと映画をやりたかったのに、10年以上も舞台をやってしまった。それが自分にとってのタイミングだったんですね。

――料理はまるでしたことがないのに、調理のシーンがとてもうまくて、美味しそうなんですが。
 
 秘訣は練習しかないです。とにかく台所に立って具材を切りまくり、煮たり焼いたり蒸したりしました。最初は味付けがうまくいかず、本当にまずかった。もったいないので食べましたが、まずい物をずっと食べていると、涙が出てくるんですよ。泣きながら食べて、地獄でした。キャベツの千切りをしている時に指をちょっとだけ切ってしまい、たいしたことはないんですが私、血に弱いので、血を見て失神してしまい…。この歳でなんて自分は情けないんだと思い、また泣いてましたね。

――料理はYouTubeでも勉強した、と。

 クランクイン前にキャベツの千切り、オムライス、寿司、アイス、豚キムチ、牛丼、手羽から揚げ、プリン、しそジュース…全てやりました。撮影時での料理はフードーコディネーターさんが考え、アレンジしたもの。それまで料理をしたことがなくて包丁、まな板を買ったところから始めたわけですが、今は料理が得意とまではいかないにしても、好きになりました。スイーツも作れるし、寿司も握れます。不器用なりに続けています。
 
――東京・国立市の有名町中華店「英福」を借りての撮影でしたが、実際の店舗でお芝居されるのはいかがでしたか。

(役柄の人物は)20年、30年とここで働いているわけですね。その年月を1週間ぐらいで埋めないといけない。想像力と、とにかく現場に入ったら空き時間、隙間時間に店内を歩き回り、1万回ぐらい冷蔵庫を開けたり閉めたり、どんぶりをテーブルに持っていったり、店の壁、鍋、包丁、レジ、ドア、トイレ、椅子…すべてを行ったり来たり、立ったり座ったり、置いたり持ち上げたり。目をつぶっても店内を歩けるようにしました。

――お店の営業が終わってから夜遅くの撮影だったそうですね。

 夜9時か10時頃ですかね。外ロケ、路上でも撮影してたんですけど、歩行者を一時止めたり、話し声が夜だと響くんですね。周りが静かだから。その時、酔っ払いのいかついおじさんが来たんですね。「おい、お前らー!」って怒った感じで大声出してきて。すぐ謝りにいこうと寄っていったら「お前ら頑張ってるな」って言って、1000円札を渡してきて「頑張れよ」。そう言って歩いて行ってしまいました。すぐ追いかけて「お気持ちだけで十分です」って返しましたが(笑)。

――50歳を過ぎて役者生活の日々の苦労とか、これからの目標とか、目指してる役者さんを教えてください。

 私、怒られるより褒められる方が好きなので、褒められたいです。どんどん何でもいいから、褒めてもらいたいです。「君は天才か」とか。褒められれば褒められるほど、力を発揮できます。褒めるところがなくても、適当に「いいですねー」って言ってもらえると最高です。目指すところは、どの監督からもどの俳優からも「この人と一緒に仕事をしたい」と思われる役者。そして「この人が出演している作品なら必ず見る」という…。トム・クルーズやレオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピットはそういう役者だと思います。

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