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記事全文を読む→気になる著者に直撃!〈倉本一宏〉六国史から見る平安貴族の実像!実は「一夫一妻制」の婿取り婚だった
「続 平安貴族列伝」
日本ビジネスプレス・1870円
和歌を詠み、蹴鞠に興じて、色恋に励む─。高貴な家系に生まれたがゆえに、お気楽に遊んでばかりいる印象を、多くの人が平安貴族に抱いていることだろう。ところが、実際はそうでもなかったと教えてくれるのが、歴史学者・倉本一宏氏の新刊だ。貴族43人の生涯にスポットを当て、平安の世の実態を浮き彫りにしている。
本書で倉本氏は日本の正史である六国史に数えられる「日本文徳天皇実録」と「日本三代実録」に載せられた「薨卒伝(こうそつでん)」をひもといている。この薨卒伝とは、亡くなった高官の略伝で、いわば死亡記事。多くは簡単な故人の来歴を記しただけのものだが、個性や人間性を示すものもある。例えば、多くの教科書にも出てくる在原業平は‥‥。
「多くの女性と恋愛をする『伊勢物語』の主人公のモデルとされていることから、在原業平は恋ばかりしていた、ともすれば軽薄な色男というイメージを持っている人も多いと思います。が、物語で相手にしている女性のほとんどが親戚です。決して縁もゆかりもない女性をナンパしていたわけではありません。実際の彼は非常にマジメな役人でした」
平安時代の人々が恋愛至上主義だったわけではないのだ。このように我々が持つ平安貴族のイメージには誤解が多い。倉本氏はNHK大河ドラマ「光る君へ」(24年)の時代考証を務めた際にも、この誤解を念頭に置いていたという。
「『平安貴族は恋愛ばかりして仕事をロクにしない』という世間の誤解を解きたいと思いました。なので『光る君へ』では、貴族が仕事をしている場面や日記を書くシーンをずいぶん増やしてもらいました」
この誤解の多くは、現代まで読み継がれる平安文学によって生み出された。
「『源氏物語』をはじめとする女流文学の作者の多くは、正式な妻ではない妾と呼ばれる立場でした。正妻が書いたとしても、夫との日常生活ばかりで、あまり読む人の興味をそそらない物語になっていたでしょう。その点、不安定な立場である妾であれば『今日はあの人が来てくれた』『最近、来なくなった。捨てられたのかしら』という、誰もが楽しめる恋愛物語が書けますからね」
なるほどと納得しつつも、「当時は一夫多妻制だったのか。うらやましい」と思った諸兄もいることだろう。だが、それも実は大きな誤解である。
「平安時代は『一夫一妻制』でした。しかも、当時の結婚の形態の主流は『婿取り婚』です。男が正妻の家に同居していて、食べる物も着る物も正妻の家で用意してもらっていました。常識的に考えて『今日はあの女のところに泊まるから、服を用意してくれ』と言われた正妻が、快く送り出すわけがありませんよね」
正妻だろうと妾だろうと、愛した相手は自分だけを見ていてほしい‥‥これは現在でも変わらない人間の心理ではないか。
「まず本書で、より平安時代を身近に感じてもらえればうれしいです。戦国武将ほど有名ではありませんが、平安貴族のさまざまな人生を紹介しています。ご自身の生き方と重ね合わせながら、今後の人生の参考になれば最良です」
〈春燈社 小西眞由美〉
倉本一宏(くらもと・かずひろ)歴史学者 1958年、三重県生まれ。83年、東京大学文学部国史学専修課程卒業、89年、同大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程単位修得退学。97年、博士。国際日本文化研究センター名誉教授。専門は日本古代政治史、古記録学。
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