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「ぶっ倒れるまで飲んでいた」
「あのさ、ゆみりん‥‥これから映画を観ても、お願いだから軽蔑しないでね」
由美香は、“ゆみりん”こと吉行由実に告げた。AV監督・平野勝之との不倫旅行を描いたドキュメントAVが反響を呼び、劇場公開された初日のことだった。
吉行は、ピンク女優だけでなく監督としても手腕を発揮する才媛であり、由美香とは親友の間柄だった。AVで発売したものが劇場公開されるという快挙で、しかも「観に来て」と誘っておきながら、直前に揺れる胸中を明かした。
その理由は、これまで由美香が禁じてきたプレイがあることだったと吉行は言う。
「不倫旅行の最後に、いわゆるスカトロをやらされた描写があったんですね。今まで1度もやってこなかったけど、作品の流れとして『できないわ』とは言えない。それに、監督を男にしてあげたいという気持ちもあったかもしれない」
ただし、由美香と平野の不倫関係は、この旅を終えると同時に破局した。ラスト近くの不機嫌になってゆく由美香の表情まで、残酷なまでに平野のカメラはとらえている。
映画が始まる直前の言葉からもわかるように、由美香は恋愛問題が起きると吉行を求めた。ある時は、ストーカーと化した恋人の嫉妬が激しくなり、由美香が撮影に行こうとすると暴力をふるった。このままでは女優としての信頼まで失ってしまう─ 吉行は、1カ月半ほど由美香をかくまうことにした。そして吉行は、由美香の本音を聞いた。
「男の人とつきあって、相手を受け入れることはできるが、自分の心を開いて相手にぶつけることはできない」
どこか菩薩のような性格だが、逆に言えば男をカン違いさせてしまうことも少なくない。それは最期の瞬間まで、由美香にとって不幸なまでに連鎖した。
さて吉行は、由美香を主演や助演に据えて、多くのピンク映画を撮った。それは親友としてだけでなく、女優としての資質を買ってのことである。
「もともと女優になるとか演技をするという意識があったわけではないが、ただ、作品ごとに求められたことは必ず返すという気持ちがあった。だから日常生活の中のナチュラルな感情表現もうまいし、現実離れしたストーリーもハマる。その両方ができる人は意外と少ないんです」
映画評論家の柳下毅一郎は、由美香が亡くなった翌年に「女優 林由美香」(洋泉社刊)という全集を完成させた。すべての作品解説やロングインタビューを網羅した分厚な本である。
「16年間にわたって新作が出続けていたのは、実は一般作の女優でも例がないこと。それだけ女優としての価値が高いし、多くの友人や業界全体に愛されていたのだから、全仕事の軌跡を残すべきだと思った」
突然の訃報に驚きはしたが、どこかで、そんな日がやってくるのも否めない部分もあった。
「撮影はハードだし、終わればぶっ倒れるまで飲んでいた。それにダイエットも重なれば、決して理想的な生活ではなかったでしょう」
そして「最期の日」がやってきた‥‥。
アサ芸チョイス
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