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死んでも「アイツ」に勝ちたかった⑦ ピューマ渡久地 世界王者・ユーリに壮絶TKO負けの悔根(2) 

1度は王座戦を断っていた

 渡久地が活動停止中の2年半で周囲の状況は一変していた。ユーリは92年にWBC世界フライ級王座を獲得し、着々と防衛回数を伸ばしていた。辰吉や鬼塚も、浮沈こそあったものの業界のリーダーとして存在感を増していた。「平成の三羽ガラス」の中で渡久地だけが忘れ去られようとしていた。

 ユーリのことは新聞やボクシング専門誌でチェックしていました。試合はテレビで生中継を見たり見なかったりで、見なかった時はあとでビデオを見ました。周りは「ユーリはボクシングがうまい」と言うけれど、僕はそれほどとは思わなかった。ただ、スピードがあって右ストレートを当てるのはうまいなと。あの右だけは警戒しないといけないとは思っていました。

 処分が解けた渡久地はジムを移籍してリングに戻ったが、初戦で元世界王者に9回TKO負けを喫してしまった。強打は健在だったが、勝負勘にはサビが見られた。

 その後、元の地位(日本王者)に戻るまでには、実に2年という時間がかかった。この頃には所属ジムも再度変わっていたが、日本王座は3連続KO防衛を果たすなど、国内では頭ひとつぬきんでた存在になっていたのである。ユーリ陣営から世界王座9度目の防衛戦の相手として逆指名を受けたのは、そんな時だった。

 狂喜して二つ返事で受けたかと思いきや、意外なことにその話を渡久地はいったん断ったというから驚きだ。

 日本タイトル3度目の防衛戦が終わったばかりで、気が抜けていたんですよ。そんなタイミングでいきなり話が来たのでビックリしました。試合まで2カ月しかないというし、十分な準備ができないじゃないですか。

 ユーリと戦うんなら、ベストの状態でやりたいですからね。それに、あの頃の僕には信頼できるトレーナーもスタッフもいなかったから、モチベーションも高くはなかった。ボクシングは個人競技だけど、実際はボクサーひとりじゃ戦えないんですよ。だから「7月じゃ無理です」と断った。そしたら家内から言われたんですよ。「覇気のないピューマ渡久地の試合なんか二度と見たくない。ボクシングそのものをやめてしまえ!」って。ユーリ側に「やる」と伝えたのは次の日でしたよ(笑)。

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