芸能

百恵と淳子、「親友を装っている」の中傷

 ベトナム戦争が終結し、オイルショックが勃発した73年──不安な世相に、二輪の可憐な花が咲いた。それはまるで、殺伐とした人々の心をやわらげるため、空から舞い降りた〈天女〉のようであった。桜田淳子と山口百恵の2人は、初めからスターとしての宿命を背負っていたのだ。

 林寛子は「スター誕生!」(日本テレビ)という番組を“大きな幹”ととらえた。桜田淳子や山口百恵など、圧倒的な数のスターを生んできたからだ。

「それに比べたら私たちは“枝葉”の番組だったかもしれません。そこで私は運よく第1回のグランドチャンピオンになりましたが、あの番組に太刀打ちできるほどのスターは出てきませんでしたね」

「スタ誕」の成功を受け、各局がスカウト番組を独自に始めた。フジテレビは林寛子や石川ひとみを見出した「君こそスターだ!」(73年~80年)を、テレビ朝日はあいざき進也を獲得した「あなたならOK!」(73年)や、岡田奈々が出た「あなたをスターに!」(75年)である。

 いずれも「スタ誕」ほどの人気を得ることはなく、テレビ史の闇に消えてしまった感がある。ただし、各局が門戸を開いたことにより、楽屋の風景は一変した。

 同じ70年代アイドルでも初期の頃は天地真理や南沙織ら20歳前後が多かった。それが70年代半ばになると「中3トリオ」を契機に、中学生や高校生がアイドルの主流となる。

 百恵や淳子から1年遅れて74年に歌手デビューした林寛子は、まるで“放課後”のようなひとときをテレビ局で過ごした。

「TBSの『せんみつ・湯原ドット30』で、よく百恵ちゃんと同じ楽屋になりましたね。私より1つ上の学年だったんですけど、レポートの提出とか英単語を憶える段になると『やってる?』って言いながら見てくれました。私にとっては“面倒見のいいお姉さん”でした」

 器用だった林は、当時のものまね番組で何度も優勝している。そのレパートリーの1つに淳子があり、本人の目の前で「わたしの青い鳥」を歌ってはアドバイスをもらった。

「淳子さんは『やめてよ~』と言いながら、すごく楽しそうにチェックしてくれました」

 百恵と淳子もまた、中学3年のある時期、同じ校舎で机を並べた。林間学校にも一緒に出かけ、かけがえのない“青春前期”を共有している。

 ただし、周囲のライバル視は、2人の友情に少しずつ影を落とす。百恵の引退直前に出版され、200万部を超すベストセラーになった「蒼い時」には、こうした苦悩がつぶさに描かれている。

〈マスコミは一様に私たちをライバル視しはじめていた。そのことに抵抗すべく、さらに親しくしていると「親友を装っている」と言われてしまった。

「気にするの、よそうね」と言いながらも、やはり周りには勝てなかった。やがて彼女には彼女の世界ができ、それは私のその世界とは接点のないものになってしまった〉

 百恵は「お互いに気を配りすぎての結果」と分析している。こうしたわだかまりが氷解したのは、百恵が引退を発表してのことだった。淳子が電話をかけ「これからが本当の友達」と告げている‥‥。

カテゴリー: 芸能   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
2軍暮らしに急展開!楽天・田中将大⇔中日・ビシエド「電撃トレード再燃」の舞台裏
2
不調の阪神タイガースにのしかかる「4人のFA選手」移籍流出問題!大山悠輔が「関西の水が合わない」
3
ボクシング・フェザー級「井上尚弥2世」体重超過の大失態に「ライセンスを停止せよ」
4
「メジャーでは通用しない」藤浪晋太郎に日本ハム・新庄剛志監督「獲得に虎視眈々」
5
新庄監督の「狙い」はココに!1軍昇格の日本ハム・清宮幸太郎は「巨人・オコエ瑠偉」になれるか