芸能
Posted on 2022年02月15日 09:58

三崎千恵子、夫に従順も口では負けぬ「寅さんのおばちゃん」演技の“心地よさ”

2022年02月15日 09:58

 2012年、平成24年2月13日。三崎千恵子(みさき・ちえこ)が死去。享年91歳。

「男はつらいよ」シリーズ第1作から第49作に、寅さんこと、車寅次郎のおばちゃん(叔母)・車つね役として出演。寅さんファミリーの欠かせない一員であり、生涯の当たり役である。ニッポンのおばちゃん=寅さんのおばちゃんであり、三崎千恵子なのである。

 光本幸子が初代マドンナを務めた「男はつらいよ」第1作の公開は1969(昭和44)年8月27日。1920(大正9)年生まれの三崎は当時、49歳であった。

 さて、「男はつらいよ」シリーズだが、当初は、「続・男はつらいよ」(1969年11月15日公開)との2作で終了予定であったという。確かに、1作目と2作目は山田洋次が監督を務めているが、第3作の監督は森崎東、第4作は小林俊一が監督なのである。山田洋次は、脚本のみ。5作目が完結編となるはずであった。しかし、「男はつらいよ」は、その後、延々と作られることになる。

 そして、この第2作こそが、山田洋次の「男はつらいよ」の原型といっていい。「続」の始まりであり、寅さんファミリーの役割分担が見事に描かれ、演じられるのである。

 おばちゃん=三崎とおいちゃん(森川信)の掛け合いが見事である。

「さあ、そろそろ帰ろうかな」とさくら。

「まだいいじゃないかよ。博さんとお帰りよ」

「晩飯だけ食べていけ」と促すおいちゃんである。

「あのばあさんとな、差し向かいでメシ食うの、飽き飽きしてんだよ」とおいちゃんが軽口を叩くと、三崎演じるおばちゃんが満男をだっこして、タコ社長の印刷所から、戻ってくる。

「満男ちゃんに、おとうちゃんの働いているとこ見せてきた」と、おばちゃん。

「バカだな。あんな埃っぽいとこ、連れてく奴ねえよ」と、おばちゃんを叱るおいちゃん。

「そうかね、悪かったかね」とすぐさま応じるおばちゃん。

「平気よ」とすぐさま、とりなすさくら。

 おいちゃんは、満男を見やり、「…しかし、この子はなんだね。ますます、寅さんに似てきたね」と。続けて、

「おれに似りゃ、もうね、もうちょっと二枚目なんだけどな」

「バカだね、それじゃタヌキ面になっちゃうじゃないかよ」とおばちゃん。

「ゲタ面よりマシだよ」と応じるおいちゃん。

 この「バカ」の言葉を介した、丁々発止の間髪を入れずのやり取りこそが、寅さんの会話の原型と言っていい。下町家族の典型が見て取れる。

 おばちゃんは、おいちゃんに素直に従いつつも、口では負けていないのである。三崎のこの呼吸が心地いい。それでいて情に厚く、涙もろい。演じる役と本人のイメージが全き一致を見ているといっていいだろう。

 三崎は、当時の東京府北豊島郡西巣鴨町の出身。「おばあちゃんの原宿」で名高い、あの巣鴨の生まれである。柴又帝釈天と同じく庶民の信仰を集める、とげぬき地蔵で有名な高岩寺があるのもむべなるかな。

 家業は青果問屋という。

 おばちゃんのほつれ髪と前掛けは、伊達ではないのである。

(文中敬称略)

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    スポーツ
    2026年06月24日 07:15

    ドジャース・大谷翔平の第二子誕生をめぐって、フェミニストを名乗る女性たちがSNS上で「多産DVだ」「年子出産は女性虐待だ」と騒いでいる。大谷夫妻は昨年4月20日に第一子誕生を報告、この6月20日に第二子誕生をアナウンスした。これら誹謗中傷コ...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    スポーツ
    2026年06月24日 11:30

    一発出たら同点。3-7と4点をリードされて迎えた7回裏、二死満塁の場面。この日いちばんの勝負どころで、広島・新井貴浩監督がベンチから送り出した代打は捕手・石原貴規だった。結果は空振り三振。最大の山場でなぜ、より長打を見込める打者を送り込まな...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    スポーツ
    2026年06月24日 13:30

    これはトレードのショーケースなのだろうか。そう思ってしまったのは、阪神タイガースの梅野隆太郎捕手が2軍から再昇格し、6月23日のヤクルト戦に即スタメン出場して攻守に高い能力を見せつけたことだ。1-0とリードした5回に二塁打を放ってチャンスメ...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    注目キーワード

    人気記事

    1. 1
    2. 2
    3. 3
    4. 4
    5. 5
    6. 6
    7. 7
    8. 8
    9. 9
    10. 10
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/6/23発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク