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Posted on 2022年08月21日 17:59

大高宏雄の映画一直線/シリーズ最高興収「ONE PIECE FILM RED」に見るメガヒットの仕組み

2022年08月21日 17:59

 今年の夏興行について、最速でお伝えしよう。

 映画界は8月15日を挟んだお盆の時期が、夏興行のピークとなる。お盆を過ぎたあたりから8月末までが、各作品の踏ん張りどころだ。この時期にある程度もちこたえると、数字は伸びていく。とはいえ、大勢は決まったとみていい。

 その前に「行動制限なし」の「新局面のコロナ禍」といった事態が、興行全体にどの程度の影響を与えたかといえば、やはり少なからずあったと言える。

 とりわけ新型コロナウイルスの感染者数が激増していった7月下旬あたりは、かなりの影響が出た。「行動制限なし」だが、その広がり方が予測不能だった面もあり、ファミリー層ターゲットの作品中心に、映画館へ赴く人たちの足が幾分遠のいたのである。

 それが8月上旬あたりからは少し安心感が出てきたのか、ファミリー層中心の作品でも集客が安定してきた。その過程で、真打ちの作品が登場した。8月6日公開の「ONE PIECE FILM RED」である。

 爆発的なスタートのままに、なんと公開後わずか10日目の8月15日に、興収70億円を突破してしまった。この時点で、早くも「ONE PIECE」のシリーズ最高興収を記録したのである。尋常ではない速さだ。コロナ禍の影響は少ないとみた。

 作品は非常に見応えがあった。これまでの話の展開とは違って、麦わら・ルフィの幼なじみである歌姫・ウタの圧倒的な歌唱力、見事な声量が、作品の本筋をなす。

 ただ、ここでの歌は諸刃の剣だ。人々を虜にするとともに、自由を奪っていく。映画は〈歌=絶対的な価値〉にしがみつくことの危うさを描く。

 これは歌だけに限った話ではない。今を貫く大切な思考、行動の原点である。大団円の激闘も、見事な出来栄えであった。ファン期待の人物の登場、多彩な宣伝展開なども含めて、メガヒットへの道筋が、実に周到に組み立てられていた。

 最終的な興収は、ここでは記さない。100億円は超えるだろうとみて、配給の東映の歴代作品では最高興収もほぼ確実、との推測に留める。

 ちなみに作品別では「キングダム2 遥かなる大地へ」(8月14日時点、40億5000万円)、「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」(同、40億4000万円)が次に続く。

 これに、純然たる夏興行の作品ではないが、「トップガン マーヴェリック」(同、109億6000万円)が、依然として大健闘していることを付け加えれば、夏興行の概観がおのずと見えてくるだろう。

 事前の予想のままに、コロナ禍以降では最高の夏である。

 だが、不満もある。いつもながらの傾向とはいえ、シリーズもの、続編が興収上位を独占する。何本もある他の作品の不振ぶりが、それによって覆い隠されている気もしたのである。

(大高宏雄)

映画ジャーナリスト。キネマ旬報「大高宏雄のファイト・シネクラブ」、毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2022年で31回目を迎えた。

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