社会
Posted on 2023年04月05日 05:58

大勝軒「ラーメンの神様」が打ち明けた「つけ麺の秘密」…足を向けて寝られないチェーン店があった

2023年04月05日 05:58

 東京・豊島区東池袋、サンシャイン60ビルからそう遠くない所にあったのが、東池袋大勝軒だった。オンボロな建物の1階がラーメンの聖地とファンに呼ばれ、常に行列が絶えなかった、あの名店である。

「特製もりそば」が名物で、丼一杯に盛られた冷たい麺を熱い汁につけて食べるスタイル。麺の量は260グラムもあり、誰もが満腹を感じることも人気の秘密だった。

 ややこってりしているが、深みのある濃いスープはクセになり、リピーターが続出した。

 その厨房でいつもニコニコしてしたマスターの山岸一雄氏(写真)は「ラーメンの神様」と称されたものである。

 毎年4月の第一週を迎えると思い出すのが、このマスターだ。2015年4月1日に80歳で亡くなった。桜の花が散っているのを見ながら、護国寺で行われた7日の通夜、8日の告別式に足を運んだものである。

 長野県出身の山岸氏は中学卒業後に上京し、中野駅近くの親戚の中華料理屋などで修行を積み、独立した1961年にこの地で開店した。奥さんとその妹で店を切り盛りしていたが、弟子は取っていなかった。

 奥さんが52歳で亡くなった後、喪失感に襲われ、店は7カ月も休業したままだった。店先の休業告知の紙に「いつ開くんですか」「再開を楽しみにしています」というような書き込みがあったのを見て、再開を決意する。

「ラーメン店を開きたいのですが、教えてもらえませんか」

 電話で問い合わせてきた者に対しても、懇切丁寧に教えることは珍しくなかった。弟子になりたい者を拒むことはせず、レシピを教えることも厭わなかった。

 ある時、関西で大勝軒がオープンしていたので、入ってみた。つけ麺を頼んだが、マスターの東池袋大勝軒とは大きく味が異なっており、3分の1も食べられず、残してしまった。

「つけ麺って、慣れてないんでしょ。これが東京では流行っているんですよ」

 会計の際に女将がそう言う。いやいや、何から何まで違いますから…腹の中でそう言っていた。

「マスター、とんでもない店に行きましたよ。あんな店が大勝軒って、マイナスイメージになるんじゃないですか」

 後日、マスターに関西のお店のことをこぼした。

「いろいろなのがいてねぇ。2日しか修行しないで、その後に『大勝軒で修行した』としている店もあるし、『1週間で店を出せるように教えて下さい』なんて言う者もいるんだよ。でもさ、それぞれにいろんな事情があるから断れないんです。そんなにヒドい味だったの? 困ったな…」

 マスターは教えを請う者に対し、一円も要求しない。他の有名なラーメン店では、独立する弟子から「のれん代」として数百万円を要求するのに、彼は開店祝いとして祝儀を送るほど。これも神様と呼ばれる所以なのだ。

 つけ麺はラーメンとともに、日本では誰もが知る食べ物となった。それは間違いなく、山岸氏の功績である。しかし、彼はそうではないと、きっぱり否定した。

「オレがさ、よく食べにいっていたのが『つけ麺大王』だったんだ。コレが流行っていてね。こんな組み合わせができるんだと、勉強になった。『大王』は酸っぱさが強かったけれど、ウチはそうはしなかった」

「つけ麺大王」は都内にチェーン店が急速に増えていき、一時はかなり人気があった。

「正確にはもりそばもつけ麺なんだけど、『大王』がつけ麺でファンを広げてくれたから、今の人気があると思っているんです。だから、『大王』さまさま。今は店舗が少なくなったけれど、『つけ麺大王』には足を向けて寝られないねぇ」

 桜吹雪を眺めると、マスターの笑顔を思い出すのだ。

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    芸能
    2013年11月26日 10:00

    11月8日、歌手・島倉千代子(享年75)が肝臓ガンで死去した。島倉といえば、演歌の王道を歩むように、その生き様は苦労の連続だった。中でも、莫大な借金返済で味わった地獄は理不尽極まりなかったようで──。島倉は、男を信じて手形の保証人となったせ...

    記事全文を読む→
    芸能
    2026年04月28日 16:30

    バナナマンの日村勇紀が当面の間休養に専念すると、所属事務所ホリプロコムの公式サイトで発表した。今年に入ってから体調を崩すことが多く、医療機関を受診した結果、休養が必要との判断に至ったのだという。「心身の回復を第一に、コンディションを整えなが...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    スポーツ
    2026年05月07日 06:30

    ゴールデンウィークが明けても再起の見通しが立たず、長すぎる空白期間を過ごしているのは、左内腹斜筋肉離れでリハビリ中のヤクルト・山田哲人内野手である。沖縄・浦添キャンプのシートノック中に脇腹の張りを訴え、戦線離脱。5月になっても打撃のひねり動...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/5/12発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク