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Posted on 2023年08月09日 05:58

冷麺だけではない馬産地の難解コース「すごい高低差」/日本全国「旅打ち行脚」~盛岡競馬(上)

2023年08月09日 05:58

 盛岡に出かけるというと、だいたい二言目、いや一言目に冷麺の話になり、3~4人に1人は、盛岡がニューヨーク・タイムズで日本で行きたい街に選ばれたから、という話になる。

 無論、目的はそのどちらでもなく、「YOUは何しに」と聞かれて「競馬」と答えると、大方は「競馬ですか」という微妙な反応で、岩手に競馬場があることもわかっていない人が少なくない。地方競馬は全国に15場で、そのうち盛岡競馬、水沢競馬の2場があるのに。

 青森、岩手、秋田にまたがる南部地方は、平安時代から馬産地として知られた。平泉で育ち、源平合戦で活躍した後、源頼朝の追討の命で中尊寺に逃げ延びた弟・義経は馬乗りの名手だった。一の谷の戦いの「鵯越の逆落とし」は人馬一体で戦った奇襲作戦として、歴史に残る一戦になった。岩手は昔から、馬とは所縁の深い土地柄なのだ。

 岩手に出かけるのは今年2度目になる。4月に訪れたのは、県南にある水沢競馬だ。水沢市(現・奥州市)には、あの大谷翔平が生まれた旧姉体村がある。姉体村は水沢競馬場にも中尊寺にも近い。

 この時は先に中尊寺を巡り、義経が戦の時に身に着けていたと言われる大兜をデザインした勝守を買ってバッグに入れておいた。すると馬券は最後に逆転勝利という結果になって、ご利益があった。ちなみに、大谷がホームランを打った時に被る兜が義経の大兜をイメージしたものかどうかはわからない。

 8月1日、盛岡競馬の5回6日目。東京駅から盛岡駅へははやぶさ号で2時間十数分、東京駅から京都駅と所要時間はほぼ同じだ。前回の義経の勝守のこともあるから、今回は競馬場に行く前に盛岡八幡宮に寄って、勝守を手に入れた。デザインは、はやぶさか岩手の県鳥きじなのだろう。ついでにおみくじを引いたら「中吉」だった。幸先がいい。

 盛岡競馬場へはいつものように、カーシェアを利用する。北上川水系中津川にかかる網取ダムを渡って、深沢山方向へ緑の中の一本道を進む。山中をズンズン走らせるのはお隣、青森にある青森競輪場へ行くのと似ている。そして20分ほどすると突然、白亜の殿堂が姿を表した。パッと開ける感じである。

 1996年に市内の高松公園から移転して27年が経過しているが、改修が行き届いているのか、施設はピカピカで真新しい。入り口正面にはフランス人の彫刻家によるシンボリックな馬像がドーンと聳え、博物館か何かと勘違いしそうだ。

 先に水沢競馬場でもお世話になった岩手県競馬組合の今泉潤さんに挨拶し、取材用のパスをいただくことができた。

 沖縄地方を除けば、日本はカンカン照りの猛暑列島で、歩いているだけで頭がジリジリして焼けそうに熱い。ところが、メインスタンドは冷房完備。ありがたい。

 スタンドから一歩外に出ると、馬場は左に深沢山を見ながらグルッと緑に囲まれている。盛岡は全国で唯一の左回り、1周1600メートルのダートコースの内側に、1周1400メートルの芝コースがある競馬場として知られる。

 この日は2R、12Rが芝コースで行われた。また、ダート1600メートルのレースは2コーナーから右に延びた引き込み線の最奥からスタートする。なので、スタートは大型ビジョンでしか見ることができない。

 馬場の高低差が大きいのも特徴で、ダートは最大4.4メートル、芝は最大4.6メートルもある。ゴール前に立つと、馬が4コーナーから駆け上がって来るのがわかる。

 移設される前に盛岡競馬にやってきた作家の山口瞳が「草競馬流浪記」の中で、高低差の激しいコースのことを「遊園地のフィールド・アスレチック」と書いている。今のコース設計もその名残なのか。盛岡のコースは競走馬にとっても馬券を買うファンにとっても、難解な競馬場かもしれない。

(峯田淳/コラムニスト)

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