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NHK大河ドラマ“トラウマ名場面”オール激白「秘宝館」〈脚本家・香取俊介「山河燃ゆ」〉柴田恭兵のド迫力詰問シーンに男泣き

 初めて太平洋戦争を描いた大河ドラマと言えば「山河燃ゆ」(84年)。松本白鸚、三船敏郎、鶴田浩二、沢田研二など、異例の豪華キャストでも話題となった本作の創作秘話をシナリオ担当の脚本家・香取俊介氏(81)が初めて明かす!

 ぼくはもともとNHKで外国語放送に関する仕事を担当し、しばらく経ってからドラマ番組制作班に異動になったんです。出版社でいうと編集者のポジションで、人気脚本家の先生から脚本を受け取る仕事でした。特に、市川森一先生と橋田壽賀子先生の担当になってからは大変でしたね。2人とも超の付く売れっ子先生でしょ。多忙の中、ウチの脚本を優先で書いてもらわないといけない。撮影スケジュールが差し迫って「もう次に撮影するための台本がない」とプロデューサーから泣きつかれた時、なんと、市川先生と一緒に脚本のアイデアを考えたこともありましたね。そこで初めて脚本の書き方を学びました。

 やがてぼくのところに直接脚本の仕事が来るようになったので、NHKを退職し、独立したんです。幸い、自分で言うのもおこがましいけれど、そこそこの売れっ子になって、各局で脚本を書いている時に、大河ドラマの話が来ました。さすがにこれは緊張しましたね。ただ、外国語放送の仕事をしている時に日系の人たちの苦労を見聞きしていたので、「これを書けるのはボクしかいない」という自負もあり、ありがたくお引き受けしました。

 それからがもう大変でした。最初は、市川先生との共同脚本でしたが、多忙な方なんで、書いたのは最初の5~6回と最終回かな。残りは、ぼく1人ですよ。何が苦労だったかといえば、あの豪華キャストですから、ひとりひとりの見せ場を作らなきゃいけない。それで、それぞれの役者が出演した代表作を片っ端から見直し、どういうシーンを描けば、その役者さんの演技の本領が発揮されるか、目の肥えた大向こうを唸らせることができるかまで考え抜いて書きました。だからぼくは「山河燃ゆ」で初めて脚本家の裏表すべてを知ったとも言えます。それだけ力を込めたので、ほとんどホテルで缶詰状態でした。当時まだ幼かった子供が妻に「パパいなくなったね。死んじゃったの?」と涙ぐみながら尋ねたそうです。いや、本当に死んだような状態で書いてましたけどね(笑)。あまりの忙しさで撮影現場にも行けないから、海外ロケの話も言われても「そんなこともあったな」と思い出すぐらいですよ。

 ドラマのシーンで印象に残っているのは、特高刑事役の柴田恭兵さんが、主人公の松本白鸚(当時幸四郎)さんに「スパイじゃないか?」と詰め寄るシーンです。貧しい農村出身の柴田さんが「お前らエリートとは違うんだ」という万感の思いで怒りを込めて詰め寄るシーンは、みずから書いた脚本とはいえ、涙がとめどなく流れてきました。そのくらい真に迫った演技でした。登場人物に感情移入しすぎて、執筆の段階から涙を流していたんですよ(笑)。後にも先にもあんな経験はないですね。

 それから数年後、NHKで日米合作のスペシャルドラマ「エドとハル」(94年)の脚本を担当しました。これが評判になって、大河ドラマにしようという話が持ち上がり、30枚ほどのプロットを書いて渡したんです。意欲があふれた時期でしたから、地方に移住し資料も大量に買って、準備万端でGOの合図を待っていましたが、局側の方針が変わり、結局、その作品は実現しませんでした。その時の興奮と落胆は今もよく覚えています。先日、その時の資料が出てきたんですが、読み返すと我ながら、たいへんに面白いんですよね(笑)。年齢が年齢ですから、最後まで書けるかどうかわからないですけれど、この作品、ぜひとも再挑戦したいと、今でも思っています(笑)。

 NHKさん、次作にぜひ検討してみては。

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