芸能

「おい起きろ、ブス!」阿部サダヲが「昭和の常識」を連発する「不適切にもほどがある」の秀逸感

 今期のドラマの中でいちばん楽しみにしていた「不適切にもほどがある」(TBS系)がスタートした。宮藤官九郎脚本、阿部サダヲ主演で、クドカンファン待望の新作だ。

 TBSのオフィシャルサイトには「意識低い系タイムスリップコメディ!!昭和のダメおやじの『不適切』発言が令和の停滞した空気をかき回す」とあり、さらに番宣CMで頻繁に流れている「純子(娘)がチョメチョメチョメチョメしちゃう!」と言いながら走る阿部の姿だけで、「これ絶対、面白いやつ!」と期待値はMAXに。

 ネタバレするといけないので詳しい内容は避けるが、「1986年の昭和から2024年の令和にタイムスリップした主人公・小川市郎(阿部)の、昭和だったら普通でも、令和の時代では完全アウトな不適切発言の数々によって巻き起こる物語」だ。

 冒頭、真っ黒い背景に「この作品には不適切な台詞や喫煙シーンが含まれていますが、時代による言語表現や文化・風俗の変還を描く本ドラマの特性に鑑み、1986年当時の表現をあえて使用して放送します」のテロップが大きく表示された。

 ドラマが始まると、「おい起きろ、ブス! さかりのついたメスゴリラ!」と叩き起こす市郎に「うるせぇな、クソジジイ!」と言い返す娘・純子(河合優実)という、いきなり「積木くずし」なやりとり&不適切な罵声を浴びせ合う親子。純子の部屋には近藤真彦のポスターが貼られていたり、市郎が箪笥の上の「写ルンです」を手にしてぐずる娘を撮ったりと、小物もバッチリ昭和でまとめている。

 続く朝食を摂るシーンでも罵り合う2人だが、そんな純子も「いただきます」はちゃんと言うし、険悪な雰囲気で登校しようとする純子に、市郎が「ママに『行ってきます』は?」と声をかけると、仏壇の前にちゃんと膝をついて手を合わせ「行ってきます」と挨拶(ここで市郎が妻に先立たれていることがわかる。妻の遺影がイワクラ(蛙亭)というのが笑える)。

 その直後に「カネくれ」と純子が小遣いをせがむと、市郎が呆れながら千円札(伊藤博文!)を渡すのだが、お札の陰に隠れたテレビ画面で流れていたのは、「ちゃっかりしてるけど、ええ子やな」とほほ笑むミヤコ蝶々という懐かしのCMだ。もうこの時点で、私のハートはわしづかみにされた。「そうそう、この時代は純子と同じ、口は悪くてもハートは純粋だったよ」などとしみじみ思ったりして。

 ほかにも印象的だったのが、市郎がタイムスリップした令和の居酒屋での場面。市郎の隣の席では、後輩の女性社員・加賀(木下晴香)からハラスメントを訴えられているサラリーマン・秋津(磯村勇斗)に対し、同じ会社の上司らしき男女が聞き取りを行っていた。その原因が回想シーンとともに説明されると、プレゼンの準備をしているところに「頑張ってね」と応援しただけでパワハラ、スマホのフリック入力が早いのを「早いね。さすがZ世代」と褒めればエイジハラスメント、同僚たちとバーベキューをして料理をよそってくれた際に「ありがとう。加賀ちゃんをお嫁さんにする男は幸せだね」とおだてればセクハラ、などなど。

 で、「こういう時代だから、褒める時も気をつけないとね」と女上司が秋津をたしなめるところに「どういう時代?」と口を挟む市郎。令和の時代に昭和脳の市郎が「時代錯誤な暴言」を吐きまくる中、ひとり腑に落ちた様子で聞いていた秋津が突然立ち上がり、「話し合いましょう」と歌い、踊り始めた。上司2人、居酒屋の客たちも巻き込んで歌い踊るという、まさかのミュージカル展開に!

 こちらがあっけにとられて見ていると、最後に問題の後輩社員・加賀がなぜかやってきて「ごめんなさい秋津先輩、わたし…叱って欲しかったんです」と歌い出し、「厳しい」と評判だった秋津に、叱られずに褒められてばかりで腫れ物に触るような扱いを受けたことが辛かったことを明かす。そして「話し合えてよかった」と見つめ合って歌う秋津と加賀で、大団円を迎えるのだった。

 このドラマは「SFコメディー」だ。SFは知っての通り「サイエンスフィクション=空想科学」。手塚治虫がその作品で描いた世界が現実になったものが多々あるように、たとえその時は空想でも、技術や新たな理論で実現することだってある。タイムスリップしかり、だ。

 一方、ミュージカルで表現された場面から感じたのは、ディズニー映画「アナと雪の女王」や「アラジン」といったファンタジーの世界だった。ファンタジー=幻想。令和と昭和の価値観や意見をお互いに交わし合い、話し合い、尊重し合いながら、和解していくなんてことは、タイムマシンより非現実的なのかもしれない。

 バスの中でも教室でもタバコを吸いまくってOKな昭和はたしかにヘンだが、令和もたいがいヘンだよと、昭和脳の市郎は気付かせてくれる。笑って、笑って、少し考えさせられるドラマだ。やっぱり、クドカンにハズレなし!

(堀江南)

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